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 日本発のビジネスモデルが、ことITに限ると、欧米の市場で採用されることはほとんどなかった。だが関西電力の子会社であるオプテージが2020年9月に設立した「Neutrix Cloud Japan(NCJ)」の公益型を目指すストレージクラウドはちょっと違う。NCJを技術面で支える、イスラエルと米国に本社を置くストレージベンダーのインフィニダットが欧米でNCJのビジネスモデルを採り入れており、現地の電力会社と詰めの段階に入っている。

 インフィニダットはメガクラウドによる顧客データの囲い込みを排するストレージサービス、「Neutrix Cloud」を2年前に米市場で立ち上げた。メガクラウドの仮想マシンにマウントできる外部ストレージをサービスとして提供する。顧客はデータをメガクラウドに置かずに済むが、Neutrix Cloud自身はストレージベンダーによるロックインと見なされがちだ。

 そのため「PoC(概念実証)は多いが実契約は米市場で20社強と振るわない」(インフィニダットジャパンの岡田義一社長)。そこで国内では違うスキームを模索。システムインテグレーターやデータセンター(DC)役員の経歴を持つ田口勉氏(現NCJ社長)の知見を得て、地域電力会社や独立クラウド事業者と連携してサービスを提供する。このモデルをインフィニダットが早速欧米でも採り入れたわけだ。

図「公益型クラウドサービス」目指すNCJの新スキーム
図「公益型クラウドサービス」目指すNCJの新スキーム
データ独占のメガクラウドにデータフリーで挑戦
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国策「スマートシティ」を狙う

 公益事業者である電力会社を巻き込んだクラウド事業について、クラウドコンサルタントの中井雅也氏は次のように解説する。「NCJのサービスの特長はストレージ技術とデータ保管場所の安全性。政府が進める『スーパーシティ』などデータの保管場所にこだわる用途が狙いだ。地域の電力会社や銀行、自治体と連携し、データと資本を地域に残すプラットフォームに昇華できればメガクラウドに対峙できるかもしれない」。スーパーシティには100超の地方自治体が応募するもようだ。

 NCJを設立したオプテージの荒木誠社長は「社会基盤を担うジャパンクラウドの本命としてNCJを育成する」と意気込む。NCJの田口社長と全国を行脚した蔵園修一ビジネス担当は「1年以内に3~5社の電力会社がNCJに資本参加する。またインフィニダット製ストレージを導入した全国15の独立クラウド事業者も参画する」と語る。

 NCJのインフラは、大阪は関電のDC内に置き、東京はメガクラウドが入る大手DC事業者内に置いてメガクラウドと構内回線で結ぶ。「電力会社や国内事業者のDCは、NCJを介してメガクラウドへアクセスできるようになる」(蔵園ビジネス担当)。「メガクラウドのストレージサービスは出口(ダウンロード)の課金が高額だ。だがNeutrix Cloudは無料」。田口社長は公平性と顧客利点を強調した。

北川 賢一(きたがわ・けんいち)
北川 賢一(きたがわ・けんいち) 新聞社・出版社を経て、1983年から日経コンピュータ記者。日経ウォッチャーIBM版と日経情報ストラテジーの2誌を創刊し、編集長を務める。現在は日経クロステック兼日経コンピュータ編集