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 330億ドル(約3兆5970億円)を投じた、創業108年の米IBM史上最大規模の企業買収が2019年7月初旬に完了した。オープンソースソフトウエアのリーダー格、米レッドハットがIBMの一事業部門になった。この大型買収はIBMが業績回復に向けて打った大きな一手と見られており、第3四半期(7~9月)決算の結果が注目されていた。

 IBMが10月16日に発表した決算の内容は悲喜こもごもと言えよう。まずレッドハット事業部門は明るい材料を提供した。IBMの発表によると、レッドハット事業の売上高は前年同期比19%増の9億8700万ドル(約1076億円)。四半期決算として初めて1000億円を超えた。19%増はレッドハット単独の直近4四半期増収率の13~15%を上回る。日本IBM広報によると「クラウド向けソフトが増収を支えた」という。

 IBMの決算資料によると、レッドハットを加えた「クラウド&コグニティブソフトウエア部門」の総売上高は6.3%増となり、前期の3.2%増、前々期の1.5%減から大きく改善した。レッドハットの買収がなかったとして計算すると同部門の伸びは前期並みの3.2%増となる。同部門のうちクラウド向けソフトの売上高は前年同期比63%増(前期は8%増、前々期は10%増)だった。買収効果はあったと言える。

図 レッドハットの四半期別売上高と増収率
図 レッドハットの四半期別売上高と増収率
IBM入りの恩恵でレッドハットの増収率が改善(出所:2019年第3四半期はIBM、他はレッドハット決算発表から)
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 しかし、IBMの決算全体で見るとレッドハットの効果は限定的だった。第3四半期の総売上高はアナリストの予想を下回る3.9%減の180億2800万ドル(約1兆9650億円)。約4割を稼ぐグローバルテクノロジーサービス(GTS)部門の5.6%減が響いた。180億ドルという四半期総売上高はバージニア・ロメッティCEO(最高経営責任者)が就任して以降、最低だ。

 IBMは引き続きレッドハットに回復の起爆剤として期待をかけるが、仮にレッドハット事業が2割伸びたとしてもその売上高は2020年の予想IBM総売上高の約6%にすぎない。

 しかもある外資系ソフトベンダーの幹部は次のように見る。「国産メーカーなどIBMの競合会社はデファクトのRed Hat Enterprise Linux(RHEL)はさておき、他のレッドハット製品を積極的に扱わなくなるだろう」。この幹部は「ブルーハット」現象が起きると予測する。IBMはレッドハット製品の販売にとどまらずハイブリッドクラウドのインテグレーションサービスを伸ばし、相乗効果を出す必要がある。それが難しいなら他の手段を講じなければならない。

北川 賢一(きたがわ・けんいち)
北川 賢一(きたがわ・けんいち) 新聞社・出版社を経て、1983年から日経コンピュータ記者。日経ウォッチャーIBM版と日経情報ストラテジーの2誌を創刊し、編集長を務める。現在は日経xTECH兼日経コンピュータ編集