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 「社員に改革疲れが見え始めたのは危険な兆候。時田(隆仁)社長は株式市場の受けを狙う改革アイデアを出すだけではなく、事業で実績を出すべきだ」。富士通でサービス事業の幹部を務めた経験を持つOBはこう指摘する。

 時田社長は矢継ぎ早に改革を進め、社長に就任した2019年6月と今を比べると株価は2倍近くまで上がっている。社長になって1年半しかたっておらず「改革疲れ」は早いのではないか。

 だが、このOBによると、多くの富士通グループ社員にショックを与えたのは、2018年10月に発表した5000人のリストラ&リソースシフトだった。「それから2年たったのに改革がまだ続くのか、と思っている社員は多いはず」とOBは説明する。

 2020年3月期決算は大幅な営業増益だったが、「富士通の生命線はサービス」と見るこのOBは伸び悩みを懸念する。「リーマン・ショックのときに売上高で米アクセンチュアに抜かれ、直近ではアクセンチュアの6割程度しかない。今度はNTTデータとインドのタタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)に追いつかれ、抜かれる寸前だ」。

図 富士通、TCS、NTTデータ3社のサービス売上高
図 富士通、TCS、NTTデータ3社のサービス売上高
停滞する富士通、3社横一線に
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 富士通のサービス事業における海外売上高はリーマン・ショック後に1兆円を超えたものの、2020年3月期は7663億円に下がり、営業利益率は0.5%にとどまる。海外が不振であるため、2020年3月期はサービス事業売上高の71%、営業利益の99%を国内で稼いだ。

 そうなると富士通が「国内サービス市場において圧倒的な地位を確立します」と宣言して2020年10月に発足させた富士通JapanがTCSやNTTデータに対抗する切り札に見えてくる。

 だが、同社の母体となった富士通マーケティングのOBは「自治体、医療・教育機関の担当部門を統合する2021年4月が近づくに連れ、富士通Japanのシビアな狙いが見えてきた」と明かす。それは「DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現性が低く、自治体や医療など利幅の薄い市場をJapanに集約し、利益責任を負わせること」だという。仮に営業利益率10%の達成を課せられたとしたらJapanの経営者は固定費の削減に手を付けざるを得なくなるとみられ、圧倒的な地位の確立どころではなくなる。

 富士通本体はDXが見込め、利幅が大きいとされる大企業と官公庁向けサービス事業を担う。だが、激戦区であり、予断を許さない。

 サービスもいいが富士通には富岳などものづくりの力がある、と水を向けるとサービス事業OBはかぶりを振った。「東京証券取引所の障害で明らかになったように、ミッションクリティカルシステムの要である大型ディスク装置に他社製品を使い、パラメーター設定すらできない。SE出身で『ものづくりの話は聞きたくない』と発言する時田社長がハードウエア事業を統括しており、先は見えた」。

北川 賢一(きたがわ・けんいち)
北川 賢一(きたがわ・けんいち) 新聞社・出版社を経て、1983年から日経コンピュータ記者。日経ウォッチャーIBM版と日経情報ストラテジーの2誌を創刊し、編集長を務める。現在は日経クロステック兼日経コンピュータ編集