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 「天城越えは無理なのではないか」。エンタープライズ・クラウド・カンパニーを称する米ニュータニックスの創業者、ディラージ・パンディ会長兼CEO(最高経営責任者)に水を向けた。すると同CEOは笑みを浮かべて「我々は天城の山に雪を降らせる」と応じた。

 のっけから禅問答のようで恐縮だが「天城」は「AMAGI」のことで米アマゾン・ウェブ・サービス、米マイクロソフト、中国アリババグループ、米グーグル、米IBMを指す。米ガートナーが2019年8月に発表した、2018年のIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)のシェア順だ。上位5社で77%を占める寡占状態であり、ニュータニックスが割って入るのは困難では、というのが筆者の問いだった。

 これに対してパンディCEOは白い雪、つまりNutanix Enterprise Cloud OSなど同社製ソフトを5社のパブリッククラウドで使えるベアメタルサーバー上に「降らせる(展開する)」と答えた。こうすることで5社のクラウドというパプリックな環境と、同社製ソフトを搭載したアプライアンスというプライベートな環境を、一元的に利用・管理できる。こうしたハイブリッド&マルチクラウド環境を顧客に提供することがニュータニックスの使命だと語ったわけだ。

 2009年創業のニュータニックスが手掛ける製品は、ガートナーや米IDCの分類で「ハイパー・コンバージド・インフラストラクチャー(HCI)」に入る。ガートナーによるHCIの定義は「スケールアウト型ソフトウエアで統合管理されたインフラストラクチャー。標準的なハードウエア上にコンピューティングやネットワーク、ストレージを包含したノードを水平分散ビルディングブロック方式で展開する」だ。

製品コンセプトはIaaSと酷似

 この定義を読み返すと分かるようにHCIのコンセプトはIaaSとほぼ同じだ。実際、次のように話す国内ユーザー企業の幹部がいる。「パブリッククラウドと同様の利用環境を自社のハードウエアで実現できるHCIをまず使おうと考えている。いきなりパブリッククラウドへ移行するのはリスクが大きいから」。

 2018年の国内HCI市場規模はIDC Japanによると前年同期比94%増の305億円。市場の受け入れが始まったばかりだ。IDC Japanの予測では2023年に700億円に増える見込みである。

 ニュータニックスはガートナーのベンダー格付けである「HCIマジッククアドラント」において一番右上の「HCIリーダー」に3年連続で位置づけられた。さらに顧客ロイヤリティー指標のNPS(ネット・プロモーター・スコア)で5年連続、90以上を維持するという。「IT業界の平均は22で、マイクロソフトとヴイエムウェアは45,IBMは27だ」とニュータニックス・ジャパンの町田栄作社長は強調する。

 しかし2016年にナスダックに上場したニュータニックスの株価は乱高下している。この点についてパンディCEOは「ソフトライセンスの売り切りからサブスクリプションベースへ移行中だが、その過程の苦しみを投資家がなかなか理解してくれない」と述べた。

 同社は2018年度(7月期)に売上高を37%伸ばしたが2019年度は7%増、2020年度第1四半期は0.5%増だった。サブスクリプション収入は2019年度に96%増で、全売上高の5割を超えた。

 売上高を伸ばすため、ニュータニックスは2019年9月に米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)とハード調達の新契約を結び、アプライアンス販売も強化する。もともとはアプライアンス販売からスタートしたニュータニクスだがソフトビジネスに転じたため、売上高に占めるハード比率は現在3%に下がっている。

北川 賢一(きたがわ・けんいち)
北川 賢一(きたがわ・けんいち) 新聞社・出版社を経て、1983年から日経コンピュータ記者。日経ウォッチャーIBM版と日経情報ストラテジーの2誌を創刊し、編集長を務める。現在は日経xTECH兼日経コンピュータ編集