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 金融機関の口座開設時などに必要な本人確認をオンラインで完結する方法。2018年11月にマネーロンダリング(資金洗浄)などの抑止を目的とする犯罪収益移転防止法(犯収法)が改正されて実施しやすくなった。スマートフォン決済などのFinTechサービスを手掛ける事業者にとっては、本人確認における利用者の負担を減らしサービスの普及を加速する起爆剤になる可能性がある。

 本人の身元を確認する方法は「KYC(Know Your Customer)」と呼ばれる。犯収法改正までは公的な本人確認書類を使って対面で実施するか、非対面の場合は本人確認書類を送付してもらったうえで記載住所に転送不要郵便を送り、本人による受け取りを確認する手順を踏んでいた。法改正により郵送でのやり取りが不要になったため、本人確認をオンラインで完結するeKYCが容易になった。

 eKYCの利点を生かして早速活用を始めたのがメルペイやLINE Payといったスマホ決済事業者だ。メルペイは2019年4月に、LINE Payは翌5月にeKYCを使った本人確認サービスを始めた。

 両社とも大まかな手順は共通している。専用のアプリを起動して、カメラで利用者本人の顔と運転免許証など顔写真付きの身分証を一緒に撮影する。利用者は画面の指示に従って顔を動かすといった、本人がその場で撮影していることを証明するための作業を実施する。一連の作業は早ければ数分で完了する。

 従来は銀行口座を連携する作業が必要だった。利用者はアプリから口座のある銀行のWebサイトに移動し、銀行が求める情報を入力することで本人確認を済ませて開設した口座の所有者である認証を受ける。銀行ごとに手続きが異なり時間や手間がかかった。スマホ決済事業者が自ら本人確認をできるようになり、利用者にとってはサービス利用開始のハードルが下がったと言える。

銀行にとっても商機に

 LINE PayはeKYCの仕組みの外販も視野に入れる。高い利便性と安全性を備えた本人確認は、FinTech以外にもシェアリングサービスなど様々なオンラインサービスに活用できる可能性がある。セブン銀行と電通国際情報サービス(ISID)も、eKYCサービスなどを提供する会社を共同で設立する計画だ。

 三菱UFJ銀行は2019年5月、同行の銀行API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を使って、他の事業者のeKYC実施を支援する新サービスを始めた。三菱UFJ銀行が保有する利用者の氏名や住所、生年月日など本人を特定するために必要な情報をAPI経由で提供する。eKYCを実施する事業者は、画像データなどの形で取得した本人確認書類の情報と照合して問題が無ければ即座に本人確認を完了できる。

 三菱UFJ銀行の手法は、メルペイやLINE Payのような所定のカメラ操作などは必要ない。本人確認済みの口座を大量に保有する銀行ならではの強みを生かしたサービスと言える。eKYCが銀行にとっても有力なビジネスモデルとなるかに注目だ。