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栃木県が地盤の足利銀行で2020年1月6日午前に、ATMが使えなくなるシステム障害が発生した。新しい勘定系システムへの移行初日だった。古いキャッシュカードと通帳を一緒に利用した際に不具合が発生。同行独自の要件を踏まえたテストが漏れていた。

 足利銀行のATMで異常が出始めたのは2020年1月6日月曜日の早朝のこと。一部の取引が異常停止し、そのままATMが使えなくなった。異常なく取引が完了するケースもあったが、同行は同日午前10時にATMでの通帳を使用した取引を停止した。

 この日は2020年最初の銀行営業日であり、同行が年末年始に勘定系システムの移行を完了してから迎える初めての営業日でもあった。情報システム部門はシステム障害を警戒して監視態勢を敷いていた。ATMの異常を検知するとすぐに関係者が集合し、ATMの動作履歴ログを分析した。IT統括部の砂田浩昭部長は「原因はすぐに目星がついた。『これが出てしまったか』と思った」と振り返る。

 ログを分析すると、顧客がキャッシュカードと通帳を同時に利用した場合にトラブルが発生していると分かった。近年発行するICキャッシュカードを使う場合は問題なく処理できていたが、古くから発行してきた磁気キャッシュカードを使う場合にだけ不具合が発生していた。通帳のページが満行となり、次のページにめくる処理をすると、勘定系システムがATMに対して「口座なし」との電文を送っていた。実際にはキャッシュカードは利用可能で口座も存在するのに、「口座なし」との誤った電文が送られてくるため、ATMはその先の処理ができずに異常終了していた。

図 宇都宮市にある足利銀行本店と古い磁気キャッシュカード
図 宇都宮市にある足利銀行本店と古い磁気キャッシュカード
古い磁気キャッシュカードがATM障害の引き金に
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 この時点で砂田部長らは「古い磁気キャッシュカードと通帳を組み合わせた取引で改ページ時にのみ不具合が発生する」ことを突き止めたが、「どのように対処すべきか迷った」(砂田部長)。ATMでカードと通帳を併用できないようにするという選択肢もあった。しかしその場合は店頭などで顧客に「カードと通帳は同時に使えない」と周知する必要が生じる。システム移行初日で店舗の事務フローも大きく変化しており、臨時の案内を依頼すると現場が混乱する恐れがあった。

 結局、午前10時にATMでの通帳を使用した取引を停止することにした。原因が明確だったため、その日のうちにプログラムを修正した。翌1月7日からはATMは正常稼働に戻った。

経営統合に伴い勘定系を変更

 足利銀行は宇都宮市に本店を置き、栃木県を地盤とする地銀である。2016年に隣の茨城県を地盤とする常陽銀行と経営統合した。現在は持ち株会社めぶきフィナンシャルグループの傘下に常陽銀行と足利銀行がぶら下がる形になっている。

 足利銀行はそれまでNTTデータの地銀共同化システム「BeSTA(ベスタ)」を利用していた。それに対して常陽銀行は、日本IBMが三菱UFJ銀行の勘定系システムをベースに開発した「Chance(チャンス)地銀共同化システム」を採用していた。

 足利銀行は経営統合に伴い、2017年4月にBeSTAからChanceへの移行を決定した。常陽銀行に勘定系システムや業務フローを合わせることによるコスト削減を狙って、準備を進めてきた。Chanceへの移行に伴い開発費が約110億円生じたが、移行後は年間20億円程度のコスト削減効果が得られると見込んでいる。

 2020年1月6日はChanceへの移行初日だったが、早速トラブルが顕在化してしまった。ただしトラブルはChance全体の問題ではなく、「足利銀行に固有の不具合だ」(砂田部長)という。実際、十六銀行や南都銀行など他のChance加盟行で同様の問題は起こっていない。

 砂田部長は「今になって考えれば、テストが不十分だった。100%のパターンをテストするのは無理だが、もう少し多くのパターンをカバーすべきだった」と反省する。