2022年2月7日、東京と京都にある国立国会図書館でシステム障害が発生した。館内パソコンを用いた資料の請求や閲覧、複写申請などが利用できなくなった。同日は入退館を含め、主に紙と人手による対応を余儀なくされた。原因は館内機器の配置換えの際に起こった人為的な配線ミス。新型コロナウイルス禍の人手不足で作業を1人で実施し、確認が不十分になった。
「入退館ゲートが開かない」「資料の閲覧や複写を申請できない」「業務用パソコンがネットにつながらない」――。2022年2月7日午前10時50分ごろ、国立国会図書館電子情報部システム基盤課の下には、複数の職員からシステムの不調を訴える報告が相次ぎ届いていた。
東京都千代田区の東京本館では、通常であれば来館者が利用者カードをかざすと自動で開く入退館ゲートが動作しなくなった。入退館をシステムで処理できなくなり、来館者に「利用申込書」を手書きで記入してもらう手続きに切り替えた。館内のパソコンを使った資料の請求や閲覧、複写申請なども利用できなくなった。
東京都台東区の国際子ども図書館は休館日だったが、京都府精華町の関西館でも同様な障害が発生した。障害発生時の来館者は東京本館で約300人、関西館で約80人。閉館まで一部の資料は閲覧や複写ができなくなるなどの不便が生じたものの、同日は人手の運用で乗り切った。原因はネットワーク機器の配線ミスによるトラフィックの異常発生だった。2月8日には全システムが復旧し、通常運用に戻った。
ブロードキャストストームが発生
2月7日は障害が複数のシステムにわたり、東京本館だけでなく関西館でも同様の事態に見舞われた。このため「(各拠点からの通信が集まる)基幹ネットワークに何らかの問題が生じていることは容易に想像がついた」(足立潔システム基盤課長)。東京本館にはネットワークの監視や保守を担う運用事業者が常駐しており、障害の発生を受けてすぐに原因の調査を依頼した。
運用事業者がアラート情報をもとに原因を調べたところ、LAN上の全ての端末に対する同報通信であるブロードキャストパケットがネットワークを埋め尽くしてしまうほど大量に流れる「ブロードキャストストーム」と呼ぶ状態に陥っていたことが分かった。国立国会図書館は「システムやネットワークの詳細な構成についてはセキュリティー上の観点から答えられない」としているが、基幹ネットワーク機器に大量のパケットが流入して高負荷状態となり、ネットワーク全体が不安定になったと説明する。ブロードキャストストームが発生したきっかけはネットワーク機器の配線ミスだったという。配線を直し、同日午前11時30分ごろにはネットワークが復旧した。