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アジャイル開発に不向き

 IT室は2021年4月からVRS運用を始められるようにアジャイル開発の手法を取り入れて短期間に開発を進めてきた。アジャイル開発はシステムやソフトウエア開発におけるプロジェクト開発手法の1つで、システム開発の段階を細かく区切ることでシステムの実装とテストを繰り返して開発を進める手法だ。

 しかしアジャイル開発には適さないシステムもある。当のIT室が2021年3月末に公表した「アジャイル開発実践ガイドブック」は、アジャイル開発に「不向きな領域」などとして「業務内容が明らかになっており、作って確認するという余地が少ない領域」「業務、サービス提供上ほぼ一切の障害や誤作動が許されない」を挙げている。

 ある自治体のIT担当者は「VRSは接種記録を台帳管理して検索するというシンプルなシステムで、まさにサービス提供上ほぼ一切の障害や誤作動が許されないケース」と指摘する。

 別の自治体のIT担当者も「アジャイルと言っては聞こえが良いが、アジャイルにも品質を担保するルールがある」と話す。「十分なテスト期間がとれなかったVRSが、ユーザーが求める要件を満たしているかどうかはなはだ疑問」といった危惧する声もある。

 一方で多くの自治体IT関係者は、IT室が今回のVRSの開発で異例の対応を繰り広げたことを評価する。自治体から寄せられた膨大な数の質問に対して丁寧に回答し、逐一公表したからだ。「少なくとも(IT室が)考えている方向性は間違ってはいない」とIT室を擁護する声が多い。

 政府関係者はVRSを2021年9月に設置予定のデジタル庁の「前哨戦」と位置づける。自治体が幅広い住民にワクチン接種を始めると、VRSの利用も急増する。トラブルへの迅速な対応は可能か、きめ細かいサポート体制が確保できているかといった真価を問われるのはこれからだ。