全2991文字
PR

NTT西日本で光回線の各種注文を受け付けられないシステム障害が起こった。同社は2021年5月、光回線の注文受付システムを更改。約6万件の仕掛かり中の注文データを新システムへ正常に移行できなかった。注文受付の再開を2度にわたって延期し、停止期間は1カ月近くに及ぶ。同社の都合で顧客に工事日の変更を要請する件数は約3万件に達した。

 「2度にわたり(光回線の)工事日を延期され、6月8日以降に連絡するとのこと。NTT西日本に対して怒り狂っとる。ネットが使えなくて本当に困っている」「NTT西日本のシステムメンテナンスのせいでドコモ光回線の工事日が決まらない。2月から連絡しているのに」――。

 2021年5月中旬以降、SNS(交流サイト)上には、NTT西日本に対する怒りの声があふれた。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、政府は緊急事態宣言を三たび発令。在宅勤務やオンライン授業へのシフトが叫ばれる中、その要であるインターネット接続に不安を抱える人が続出した。

光コラボ事業者は顧客を取りこぼし

 NTT西日本では5月11日から6月7日にかけて、家庭向けの「フレッツ光」や、法人向けの専用線サービスで新規の注文ができなくなる事態に見舞われた。同社の管内全域(富山県や岐阜県、静岡県以西の30府県)の個人や企業などが幅広く影響を受けた。

 新規の注文受付停止だけでなく、工事日の再調整を強いられた人も続出した。NTT西日本によると、同社側の準備が間に合わないといった理由で、顧客に工事日の変更を要請する件数は約3万件に達する。

 最終顧客はもちろん、同社から光回線を借り受けてサービスを展開する「光コラボレーション事業者」も頭を抱えた。同社の営業担当経由だけでなく、光コラボ事業者経由の注文も受け付けられなくなったからだ。

 光コラボ事業者であるインターネットサービス企業の首脳は「業績への影響は軽微」としつつも、「現場は大変な状況だ」と打ち明ける。光コラボ事業を手掛ける大手通信会社も、学生や社会人が新生活を始めて間もないかき入れ時に光回線の注文受付を長期間停止せざるを得なくなり、「影響は大きい」(広報担当者)。「本来獲得できていたはずの顧客を取りこぼした」との恨み節が漏れる。

 NTT西日本は5月25日にオンラインで開いた記者向け説明会で、「注文をいただいたお客様、また光コラボ事業者の皆様に多大なご迷惑をおかけしたこと、さらに注文再開の日程を延長したことについて、心からおわび申し上げます」と陳謝した。同社は5月21日から開通工事を再開し、注文受付も6月8日に始める予定だが、顧客と接する現場は今も混乱が続いている。

注文受付システム更改が引き金に

 新規の注文受付停止や工事日の延期を引き起こした原因は、NTT西日本の社内システムの障害にある。同社の営業担当や光コラボ事業者経由で光回線の各種注文を受け付けるシステムを更改する過程で、データ移行に不備があった。

 そもそも、同社が注文受付システムを更改した理由は、同システムを構成するサーバーなどの装置が更改時期を迎えたことにある。当初は2020年末から2021年初めにかけて同システムを更改する計画だったが、新型コロナの感染拡大を受けて、2021年5月に延期していた。

 同社はこのシステム更改に合わせて、5月11~16日に新規の注文受付を停止し、5月8~20日に工事を規制する計画だった。このスケジュールに沿って5月11日から新システムへの移行作業に取りかかり、システム自体は5月13日までに切り替えを終えた。同社は「機密情報に当たる」として詳細を開示していないが、ハードウエアの更改にとどまらず、ソフトウエアにも一部手を加えた。

 同社がつまずいたのは、5月14日以降に着手したデータ移行だった。注文受付中や工事実施前といった仕掛かり中の注文データを旧システムから新システムに移行させようとしたところ、データの一部を正常に移行できなかった。事前にデータ移行テストも実施していたが、「エラーなどで止まることはなかった」(猪俣貴志取締役デジタル改革推進本部長)。データ移行の不備を受けて、旧システムへの切り戻しもできない状況だったという。

 猪俣取締役は「データそのものや移行する仕組みがおかしいということではない」と説明する。テスト段階でエラーなどがなかったにもかかわらず、本番で一部の仕掛かりデータの移行に失敗した原因は「調査中」(猪俣取締役)であり、6月2日正午時点で明らかになっていない。同社は人的要因、システム上の要因の両面で分析を進めていく方針で、「原因についてはしかるべきタイミングで説明したい」とする。