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登記や供託を申請するシステムで不具合が発生した。申請データの処理が約8時間にわたって停滞する事態に陥った。原因は、通信の一部不通で電子署名の検証が滞ったこと。事前に実施した基盤システムの更改が引き金となった。更改時の接続確認が不十分で、不備を発見できなかった。

 2020年1月6日、法務省が運用する「登記・供託オンライン申請システム」が不具合に見舞われた。利用開始時刻の午前8時30分から午後4時30分ごろまでの約8時間にわたって、申請データの処理が先に進まないという事態に陥った。

 同システムは不動産や商業・法人などの登記申請をはじめ、「供託」と呼ぶ制度を利用する際の手続きなどをインターネット経由でできるようにしたものだ。2011年2月から運用しており、顧客の依頼を受けた司法書士などが主に利用している。法務省は不具合の影響数を公表していないが、同日は年明け最初の稼働日に加え、大安だった。「会社設立日は縁起の良い日にしたい」と考える経営者は多く、利用数は通常の日より多かったとみられる。

申請が「受付完了」にならない

 登記・供託オンライン申請システムの利用に当たっては専用ソフトウエアや電子証明書が必要となる。後者の電子証明書は不動産登記や商業・法人登記の手続きで申請データに電子署名をするために使う。政府認証基盤(GPKI)と相互認証された認証機関からあらかじめ取得しておく必要がある。

 ユーザーは専用ソフトウエアで申請データを作成し、電子署名をしたうえでシステムへ送信する。その後の処理状況はソフトウエアの画面上で確認でき、主に以下のプロセスをたどる。(1)申請データがシステムに受信された状況を示す「到達待ち」、(2)申請データはシステムに到達したものの、連携する省内の他システムへはまだ送信されていない状況を示す「到達・受付待ち」、(3)申請データを省内の業務システムで受け付けたことを示す「受付完了」だ。

 1月6日に起こった不具合は、ユーザーが申請データを送ると、(1)到達待ちや(2)到達・受付待ちの状況までは進むものの、そこから先に進まないというものだ。本来ならば、ほどなく(3)受付完了となるはずだが、なぜか遷移しないのだ。