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2020年6月29日、石川県と兵庫県で電話やFAXの誤着信トラブルが発生した。NTT西日本が実施した機器のリプレース作業における設定ミスが原因だった。影響は最大で約1万回線に及び、同社のトラブルとしては過去最大級。事前に実施したテストに不備があり客からの申告まで障害に気付けなかった。2024年に予定する固定電話網のIP化を前に同社の作業体制に不安が残る。

 「突然、知らない企業からFAXで食材の発注書が届いたんです。電話番号を間違えたのかなと事務の女性と話していたのですが、翌日に金沢エリアで電話回線のトラブルが発生していると報道があり納得しました」。金沢市の会社で働く女性は、2020年6月29日に発生した不思議な事象をこう振り返る。

 時を同じくして、金沢市役所で一部の電話がうまくつながらないトラブルが発生した。総務課の担当者は「電話をとったのに聞こえない状態でした。かけ直すと普通に電話できたので、電話の調子が悪いのかと思いました」と説明する。いずれの事象も、NTT西日本が同日の日中に引き起こした大規模な電話回線トラブルによる影響とみられる。

石川県と兵庫県で同時に障害発生

 障害が発生したのは2020年6月29日の昼すぎ。NTT西日本が電話サービスを提供する石川県と兵庫県の一部エリアで固定電話がつながらなくなったほか、誤った番号につながったり、FAXが異なる宛先に届いたりするトラブルが発生した。影響範囲は石川県が金沢市とかほく市、河北郡の最大約7900回線、兵庫県が丹波市の最大約1800回線の計約1万回線で、NTT西日本が引き起こしたシステムトラブルとしては過去最大級だった。

 NTT西日本は5回にわたってトラブルの状況に関するプレスリリースを公表。緊急の電話受付窓口を設け、誤って受信したFAXの回収に向かうなど対応に追われた。2020年7月20日までにFAX誤配信や電話の誤着信の申告が137件あったといい、FAXの一部には氏名などの個人情報が含まれていた。「総務省にはトラブル発生当日に報告をし、近いうちに再発防止策を含めリポートを提出する」とNTT西日本の仲憲顕設備本部サービスマネジメント部災害対策室室長は話す。

機器のリプレース作業がトラブルに

 なぜこれほど大規模なトラブルが突如として発生したのか。原因はNTT西日本が同日に実施したネットワークの切り替え作業にあった。

 同社は6月29日午前10時から、電話局内にあるIP網と固定電話網(PSTN)を接続する「変換装置」の老朽化に伴うリプレース作業をしていた。「事前に新しい機器の設定や結線まで済ませ、当日は約30のエリアについて通信を旧機器から新たな機器に切り替えるだけの作業だった」と、NTT西日本の子会社で作業を担うNTTネオメイトのデザインエンジニアリングセンタのマネジメント担当である浅井達之担当部長は説明する。NTT西日本は関西にある拠点からリモート操作で各電話局の変換装置を切り替え始めた。

 約2時間後の午後0時11分にすべてのエリアでネットワークの切り替え作業が完了。想定通りのトラフィック量が流れていることや、監視アラート、電話サービスの利用客からのトラブル申告の有無を確認し、作業は滞りなく完了したように思えた。約1時間経った午後1時の時点でもアラートは出ておらず、利用客からの申告もなかった。