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2021年6月8日夜、多数のWebサイトが閲覧不能になるトラブルが発生した。国内外の政府機関やメディア、EC(電子商取引)サイトなどが影響を受けた。原因はWebコンテンツの高速配信サービスを手掛ける米ファストリーの障害。ソフトのバグが突如として顕在化し、ネットワークの85%でエラーが起こった。顧客企業に対策の選択肢は少なく、改めてリスクの見直しが求められる。

 「Webサイトが丸ごとダウンしたが打てる手はなかった。復旧の知らせは今か今か、と念じるばかりだった」。

 国内のある大学関係者がこう話すのは、2021年6月8日に生じたインターネットの大規模アクセス障害についてだ。この日の午後7時近く、SNS(交流サイト)上には様々なWebサービスのトラブル発生を伝える投稿であふれかえった。国内外のメディアをはじめ、ネット通販の「楽天市場」やフリマアプリの「メルカリ」、動画配信の「ABEMA」や「TVer」、音楽配信の「Spotify」といった多種多様なサービスで不具合を訴える声が相次いだ。

 原因は、これらの運営会社がWebサイトの高速表示などを目的に採用していたCDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)事業者、米ファストリー(Fastly)の障害だった。ある顧客企業がサービスの利用設定を変更したことで、同社インフラに潜むソフトウエアのバグが顕在化し、同社ネットワークの85%でエラーが発生した。

図 2021年6月8日に米ファストリーのCDNで発生した大規模障害の概要
図 2021年6月8日に米ファストリーのCDNで発生した大規模障害の概要
約1カ月前に導入したソフトウエアにバグが潜んでいた
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 ファストリーによれば障害発生から49分後にはネットワークの95%が通常通り稼働する状態に戻ったという。だが影響は商業サービスのみならず、金融庁や環境省など政府機関や自治体にも広く波及したため、国内外で大きな関心を集めた。

 一連のトラブルはインターネットの運営において一部のインフラ企業への依存が進み、被害が拡大しやすくなっている実態を浮き彫りにした。「今回の障害は広範囲かつ深刻なものであり、お客様にご迷惑をおかけしたことを深くおわび申し上げる」。ファストリーでエンジニアリング&インフラストラクチャー担当上級副社長を務めるニック・ロックウェル氏は2021年6月9日、自社サイトで謝罪した。