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2021年10月1日、国土交通省の拠点で車検などの窓口業務が一時停止した。自動車検査・登録の窓口業務で使うシステムに障害が発生したからだ。同時にインターネットで自動車登録などができるサービスも停止した。原因はこの日から徴収が始まった新しい手数料に関する処理だった。データベースに設定値を上回るアクセスが発生し、システム障害に至った。

 2021年10月1日、全国におよそ90カ所ある国土交通省の運輸支局や自動車検査登録事務所で一時、自動車検査・登録業務ができなくなった。業務を支える同省の自動車登録検査業務電子情報処理システム(MOTAS)に障害が発生したからだ。

 国交省の運輸支局や自動車検査登録事務所が担う自動車検査業務は、自動車に関する安全確保や公害防止などを目的に自動車の構造や装置を定期的に検査し、保安基準に適合したものに対して自動車検査証(車検証)などを交付する。自動車登録業務は、新車・中古車の登録や、売買などに伴う自動車の所有者の変更、所有者の氏名や住所の変更などを受け付ける。

窓口業務が2時間停止

 これらの申請は、運輸支局や自動車検査登録事務所の窓口で申請者から紙の書類を受け付け、窓口担当者がその内容をシステムに入力するなどして業務を進める。しかし窓口担当者が使用するMOTASに障害が発生したため、業務が2時間ほど停止した。運輸支局などの窓口ではシステムが復旧するまで、申請者に手続きを待ってもらわざるを得なくなった。

 システム障害が発生したのは10月1日午前8時55分ごろのことだ。国交省でMOTASを担当する自動車局自動車情報課に対して、同システムの運用担当ベンダーであるNTTデータから「監視システムが運輸支局などにおける申請業務の停止を検知した」との報告が寄せられた。

 同時に「自動車保有関係手続のワンストップサービス(OSS)」と呼ぶサービスも利用できなくなった。OSSは運輸支局などの窓口で紙文書を提出しなくても、インターネットで自動車検査・登録の手続きができるサービスで、関連する税金や手数料も一連の手続きの中で納付できる。

 国交省はシステム停止に伴い、OSSのWebサイトでサービスが利用できないことを知らせる表示を出したり、OSSを利用する自動車検査・登録の関係団体などにサービス停止を通知したりした。

追加処理でDBへアクセス集中

 運用担当ベンダーがシステム障害の原因調査を始めたところ、MOTASのデータベース(DB)サーバーが停止していることが分かった。続けてDBサーバーのログ情報を調べたところ、「午前8時55分ごろにDBサーバーへ想定外のアクセスが集中した結果、システム障害が発生したことを確認した」と、国交省自動車局自動車情報課自動車登録管理室の小嶋隆弘専門官は説明する。

 想定外のアクセス集中が起こった背景には、10月1日にMOTASとOSSに対して新しい機能を追加したことがあった。「それまでにはなかったアクセスパターンを追加したことによって、DBサーバーに想定外のアクセスが集中した」(小嶋専門官)。

 追加したのは、OSSのDBサーバーからMOTASのDBサーバーへ問い合わせをするアクセスパターンだ。OSSのDBサーバーでは管理していない車種に関するデータについて、そのデータが存在するMOTASのDBサーバーに問い合わせていた。