ソフトバンクの携帯電話サービスに2018年12月6日午後、大規模な障害が起こった。約3千万回線が日中の4時間半にわたって通話や通信できない異例の事態に陥った。原因は通信の要となる、交換機のソフトの不具合だった。ソフトの異常により認証などの処理が進まず、端末が通信できなくなった。再発防止と信頼回復に向け、通信事業者としての責任が問われる。
「こんな日に限って電話する用事があるのにかけられない。何のためのスマホ?」―。2018年12月6日午後、ソフトバンクの携帯電話サービスに起こった大規模な通信障害について、インターネット上には悲鳴があふれた。
障害が起こったのは12月6日午後1時39分ごろだった。ソフトバンクや格安ブランド「ワイモバイル」の4G(LTE)回線を利用した携帯電話サービスが日本全国で一斉に使えなくなった。4Gを使った家庭向けの固定電話サービス「おうちのでんわ」や無線LANの「SoftBank Air」も利用できなかったり、つながりにくくなったりした。3Gも通信が不安定になった。
当初からソフトバンクは通信における初期段階の処理を担うMME(Mobility Management Entity)に原因があると判断していたようだ。東京と大阪のセンターで稼働する交換機のソフトがその処理を担っていた。
関係者によると、障害発生から1時間半ほどたった午後3時前後に交換機全台を再起動した。だが復旧しなかった。その後、午後5時ごろから数台単位でソフトを旧バージョンに切り戻して復旧を確認。全台の切り戻しを終え、障害が解消したのは発生から4時間半近くたった午後6時4分ごろだった。その間、多くのユーザーは通信や通話のほか緊急通報ができなかった。「ワイモバイル」を含めて約3000万回線が影響を受けた。
佐川は集荷や再配達に遅れ
通信障害は個人の生活だけでなく企業活動にも影響を与えた。ソフトバンクの4Gサービスを全面導入していた佐川急便は、セールスドライバーが持つ専用端末に集荷依頼や再配達の情報が届かなくなった。ドライバーの携帯電話も使えず「ドライバーへの連絡手段が断たれた」(佐川急便)。
例えば不在票を受け取った顧客は営業所かドライバーに電話をかけるか、専用サイトに必要事項を入力するかして再配達を頼む。しかし、障害によって顧客がドライバーに電話をかけてもつながらなかった。営業所に電話するか、専用サイトに入力するかしても、佐川急便側がその情報をドライバーに伝えられず、配達業務が滞った。
格安航空会社(LCC)のジェットスター・ジャパンは一部空港で遅れが発生した。「成田や千歳、中部、宮崎発の計11便で改札業務に通常より10~15分ほど余計に時間がかかった」(ジェットスター・ジャパン)。
ジェットスターは国内で就航する13空港の改札業務にiPhoneを計50台活用している。この業務はiPhoneに取り付けたバーコードスキャナーで搭乗券のバーコードやQRコードを読み取り、サーバーのチェックイン記録と突き合わせる仕組みだ。ソフトバンク回線を使う4空港でこの照合作業ができず、搭乗券の半券を回収する旧来のやり方で対処した。全日本空輸(ANA)も事務系を中心に約1万人がソフトバンクのスマホを導入していたため、内線や外線で連絡できなくなり、営業などの業務に支障が出た。