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オンラインで本人確認できる「最高位の身分証」マイナンバーカード。政府は2022年度末までに全国民の所持を目標とするが所持率は2021年12月時点で4割にとどまる。マイナンバーカードの普及でどのような世界が開けるのか、民間利用の状況はどうなっているのか。マイナンバーカードを取り巻く現状と課題を事例から追う。

自身のマイナンバーカードを使い、保険資格確認のデモをする牧島かれんデジタル相
自身のマイナンバーカードを使い、保険資格確認のデモをする牧島かれんデジタル相
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 2021年12月1日時点でマイナンバーカードの交付数は5057万枚。全人口の39.9%、5人に2人が持つカードとなった。政府は2023年3月末までにほぼすべての国民がマイナンバーカードを所持することを目標としているが、多くの人はカードを所持していても利用する機会はあまりない。一方、新型コロナウイルス感染症対策として自治体窓口などでの対面や混雑を避ける目的で、急速にオンライン申請サービスが拡大。これらを利用する際に、本人確認の「最上位」として位置付けられるマイナンバーカードを活用する用途は増えつつある。

行政手続きや口座開設
本人確認の活用進むか

 市役所が混雑する引っ越しシーズン。手続きのために2~3時間窓口で待つこともあるという茨城県つくば市では2021年春、スマートフォンとマイナンバーカードがあればオンラインで転出手続きをできるようにした。繁忙期の2021年3月には、転出者の9.7%に相当する256件の転出手続きがオンラインで完結。10月末までの合計でも全体の7.9%がオンラインで転出手続きをした。

 つくば市が行政手続きのオンライン申請システムを導入したのは2021年2月。新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策もあり、窓口の混雑回避を進めるためだ。採用したのは、行政デジタル化を支援するスタートアップのグラファーが提供する「Graffer スマート申請」である。同サービスはオンラインフォームに入力後、スマホにマイナンバーカードをかざして電子署名用パスワードを入力することで本人確認する。クレジットカード決済による手数料振り込みまでオンラインで完結できる。

 「今後、行政手続きの基本として、マイナンバーカードで本人確認する、スマホを入り口としたものになっていくのは間違いないと考えている」とつくば市市民窓口課の中川伸一課長は言う。一方で、「(マイナンバーカードは)まだ十分に普及していない。パスワードを覚えていない人も多い」(中川課長)。所持する人が多くないのに加え、ユーザーが使い方に慣れていないといった活用するうえでの課題も指摘する。

 人口約24万人のつくば市は2021年11月1日時点のマイナンバーカード交付枚数率は44.0%と全国平均を上回るものの、「今は過渡期。マイナンバーカードを所持していても利用していない人も多い。用途を丁寧に説明していく」と中川課長は話す。

図 公的個人認証サービス(JPKI)の概要
図 公的個人認証サービス(JPKI)の概要
なりすましや改ざんを防ぐ(出所:総務省の資料を基に日経コンピュータ作成 写真提供:総務省(マイナンバーカード))
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