日本製鉄がデジタル変革を進めている。1960年代から現場に蓄積してきた膨大なデータの活用に向けて、「つなげる力」と「あやつる力」を旗印にデジタル基盤を整備。各現場でデータ活用を先導するデジタル人材の育成も進める。日本製鉄はデジタル変革で活路を見いだすのか。日鉄DXの本気度を検証する。
新日本製鉄と住友金属工業が経営統合してから10年――。日本製鉄が全社を挙げた改革に取り組んでいる。
2022年11月に発表した4~9月期の連結決算(国際会計基準)で、本業の利益を示す連結事業利益の2023年3月期通期見通しを8000億円から8700億円に引き上げた。単独の粗鋼生産量は前期比12%落ちるが、連結事業利益は7%減にとどまり、高水準を維持する。売上高にあたる売上収益は統合後の過去最高となる8兆円を見込む。
好決算の背景には近年進めてきた構造改革や値上げがある。国内にある高炉15基のうち4基を休止し、生産設備の集約を進める。さらに自動車メーカーなど大口顧客との長期契約である「ひも付き価格」の是正にも取り組み、原材料高騰など外部コストの急激な変動も販売価格に反映していく。数量に頼らず、価格重視への転換を図る。
ただ市況の先行きには不透明感が拭えない。「事業環境が非常に厳しい状況が続いている。(鋼材需要が)伸びているのはASEANとインドだけだ」。日本製鉄の森高弘副社長は決算会見で危機感を表す。「特に中国の落ち込みが極めて大きい。世界の鋼材生産・需要の半分は中国。この影響は非常に大きい」(同)。