全3939文字

「後進国」ともいわれた日本のAI(人工知能)の研究が変わりつつある。AI分野の有力な国際学会「NeurIPS」で採択率が1%の最高位に日本勢の論文が相次いで選ばれた。何が要因だったのか。研究者や日本のAI研究の責任者の取材から明らかにする。

 2020年12月にオンラインで開催されたAI分野の有力な国際学会である「NeurIPS」。ここである異変が起こった。採択率が1%の優秀な論文として、これまで存在感の薄かった日本勢が相次いで選ばれたのだ。

図 NeurIPS 2020における口頭発表のうち「オーラル」に採択された日本勢の論文
図 NeurIPS 2020における口頭発表のうち「オーラル」に採択された日本勢の論文
採択率は1%の狭き門
[画像のクリックで拡大表示]

 NeurIPSでは、データを効率的に学習したり、学習したデータセットの中から特定のパターンを見つけ出したりする機械学習のアルゴリズムや、多層に重ねたニューラルネットワークを利用する深層学習のモデルやそれを応用したアプリケーションなどが取り上げられる。

 20年には世界各地から9467通の論文応募があり、20%の1898件を採択。

 全体を見ると例年同様に米グーグルが他を圧倒している。社内研究組織である「Google AI」や「Google Research」「Google Brain」「Google Health」、傘下の英ディープマインドで、合わせて238件が採択された。全体の1割強を占めている。企業で2位のマイクロソフト(98件)、研究・学術機関で1位の米スタンフォード大学(109件)の2倍以上だ。

図 NeurIPS 2020で論文が採択された主な企業と日本の研究機関
図 NeurIPS 2020で論文が採択された主な企業と日本の研究機関
グーグル・ディープマインド連合が圧勝
[画像のクリックで拡大表示]

 「オーラル」と呼ばれる口頭で発表する優れた論文には、9467通から約1%の106件が選ばれている。うち日本勢の論文が6件採択された。昨年は0件であり大躍進となった。国内研究機関のAI研究者は「AIにはさまざまな学会があるが、なかでもNeurIPSで論文が採択されることで、研究者の中では一目置かれる。特に口頭での発表となると国際的にも高い評価の証左となる」と解説する。