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COBOL資産を生かすべきか、マイグレーションすべきか──。「2025年の崖」対策でユーザー企業は岐路に立たされている。そのニーズに呼応する形でベンダー各社はマイグレーションの技術を磨きエンジニアの増強を急いでいる。1960年に誕生したCOBOLは還暦を迎えたばかりだが、2021年は「最終章」がいよいよ幕を開けそうだ。

 21年以上の長期にわたり稼働する基幹系システムが2025年には6割に達し、多くの企業でシステムの維持管理費がIT予算の9割以上を占めるようになる。長寿の基幹系システムは内部がブラックボックス化してデータ活用が進まず、企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)できない結果、最大で年12兆円の損失が生じる──。

 この「2025年の崖」を経済産業省が2018年9月に「DXレポート」で指摘してから2年以上がたった。だが同省によれば、2020年10月時点で日本企業の9割以上でDXが未着手だったり一部実施にとどまっていたりする。

 崖が迫るなか、基幹系システムをゼロベースで再設計するのが費用やスケジュールの面で難しいとすれば、企業には2つの選択肢しかない。基幹系システムなどで使うCOBOL資産を維持するか、Javaなどの他の言語やオープン系COBOLで書き換える(マイグレーションする)かだ。

図 DXに向けて残された2つの選択肢
図 DXに向けて残された2つの選択肢
「ラスボス」級COBOL資産、書き換えるか維持するか(写真:Getty Images)
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 維持する場合、運用コストの削減やDX向け新システムとの連携を模索しなければならない。一方、マイグレーションに取り組むにも、COBOLエンジニアの確保や旧システムと同等の信頼性の担保といった課題が生じる。いずれの道も一筋縄ではいかない。

残るは「100万ステップ超え」

 老朽化したCOBOL資産をどうマイグレーションすべきか。この課題は20年以上前からあったが、一部は先送りされてきた。「費用対効果を得にくいためマイグレーションをためらうユーザー企業は多い」。NTTデータの坂田祐司技術革新統括本部システム技術本部デジタル技術部インテグレーション技術担当課長はこう話す。

 新サービスの開発などと比べて、COBOL資産のマイグレーションはビジネス上のメリットが少ない。新規ビジネスを生み出すわけでも業務効率がはるかに高まるわけでもないからだ。

 一般にマイグレーションの多くは、開発・保守作業の効率向上とオープン化によるコスト削減を主な目的としている。安定稼働が求められる基幹系システムにおいてはコスト削減をできたとしてもつくり換える「危険」を犯す経営判断を取りにくく、マイグレーションに対する投資戦略は後回しになりがちだった。

 さらに企業に残るCOBOL資産が巨大な点が事態を厄介にさせる。「ユーザー企業に残るのは100万ステップを超えるようなCOBOL資産ばかり。1億ステップに達することすらある」。アクセンチュアのテクノロジーコンサルティング本部インテリジェントソフトウェアエンジニアリングサービスグループに所属する中野恭秀アソシエイト・ディレクターはこう指摘する。

 この20年で移行しやすいサイズのCOBOL資産は既にマイグレーションを済ませており、もはや残っているのはロール・プレイング・ゲームの「ラスボス」級ばかりなのだ。資産規模が大きければ、それだけプロジェクトが長期化してコストも膨らむ。ラスボス級のCOBOL資産は「マイグレーションに数年かかる」(中野アソシエイト・ディレクター)。経営陣を巻き込む大規模チームで取り組む必要がある。