「在宅勤務している同僚の様子がつかめないので、どのタイミングで連絡すればいいか分からない」――。「オンライン会議はどうしても長引きがち」――。テレワーク環境下ではこうした課題に直面することが少なくない。そこでぜひ取り組みたいのが、テレワークにおけるコミュニケーションの効率をアップさせ、業務の生産性を高める施策だ。テレワーク先進企業が実践する現場の工夫を紹介する。
「オフィスに出社していたときは、周囲にいる社員に気軽に声をかけたり、聞きたいことをすぐに聞けたりできた。しかし、オンラインになると気持ちの中にバリアーができてしまい、難しくなる」――。2022年春にはテレワークに取り組んで2年になるコンカー(東京・中央)の金澤千亜紀管理部バイスプレジデントCOO(最高執行責任者)はこう指摘する。コミュニケーション不足に端を発する生産性低下を防ぐため、同社が心がけたのがコミュニケーションに関するマナーやルールを設け、それを実践することだ。
ルールやマナーで円滑に
「コンカーStyle」とは
コンカーが生産性向上策の1つとして取り組むのが「リモートワーク・コンカーStyle」と呼ぶマナーやルールの設定・運用だ。コミュニケーションについて、統一したマナーやルールを掲げて社内で共有している。コンカーの金澤バイスプレジデントCOOは「各社員が自発的に取り組むことで大きなうねりになればと考え、業務の指示という位置付けではなく、こうしていきましょうと社員に呼びかける形を取っている」と説明する。
リモートワーク・コンカーStyleでは、コミュニケーションの取り方について「みんなの質問マナー編」「さくっと電話ルール編」などを用意。みんなの質問マナー編には「調べてから聞く」「ためらわず聞く」「聞いたら共有」の3つをマナーとして掲げる。
「調べてから聞く」のは、社内で利用しているビジネスチャット「Slack」の過去のやり取りなどを調べると、今聞きたいと思っている情報が載っている場合があるからだ。そうした情報が得られれば、他の社員に聞くことなく仕事を進められる。調べても情報が見当たらなければ悩み過ぎずに「ためらわず聞く」を実践。聞くことで情報が得られたら「聞いたら共有」をする。
みんなの質問マナー編では、ある社員が得た情報を、他の社員も参考にできるようにすることを狙った具体的な行動例も盛り込んだ。「みんなの見えるところで聞こう」「聞いた人はSlackに投稿して知見を残そう」などだ。「みんなの見えるところで聞こう」は、他のユーザーにとって質問に関するやり取りが参考になるだけでなく、多くのユーザーが参加するSlack上のチャンネルに質問を書き込むことで回答を得やすくする効果が見込める。
情報共有の見直しも促している。金澤バイスプレジデントCOOは「社内で共有済みの情報について、他の社員から聞かれたということは、共有の仕方が良くないのかもしれない。そこで情報を発信する側も、コンテンツを改善するよう呼びかけている」と話す。