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改正入管法の施行まで残り1カ月。外国人労働者を貴重な戦力に変えるITサービスが相次いでいる。動画を活用した業務マニュアル、日常会話の支援、就労ビザの取得など機能は多岐にわたる。人手不足に悩む日本企業と、日本で働きたい外国人とをつなぐテクノロジーを追う。

 「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」「禁煙席でよろしいでしょうか?」。2月のある夕方、東京・上野駅近くにあるファミリーレストラン「ガスト」のアルバイト控室。ベトナム出身のグェン・ティ・マイ・ティさん(23)はタブレットを見ながら接客の訓練に励んでいた。画面に流れているのは店員が笑顔で元気よく来店客に対応する動画だ。ファミリーレストランでおなじみの光景である。

 ティさんが使っていたのは店舗の従業員向けの電子マニュアルシステムだ。ガストを運営するすかいらーくホールディングスが電子マニュアル作成・共有クラウドサービス「Teachme Biz」を使って開発した。同システムを使うと写真や動画を組み合わせて電子マニュアルを手軽に作れる。作成した電子マニュアルのデータはクラウド上に置き、外国人を含む従業員がパソコンやタブレットを使いネット経由で参照できる。

 挨拶や席への案内といった接客業務のほか、野菜の切り方やパスタソースの温め方といった調理手順も用意した。従業員はマニュアルを選んで、業務に必要な知識や作法を習得できる。

外国人2300人は「不可欠の存在」

 「こんがり焼くといった表現や完全沸騰などの専門用語は、外国人に伝えにくかった。動画を使うことで理解してもらえるようになった」。第一メニュー開発グループガストメニュー運用チームの倉持十士氏はこう話す。

図 外国人労働者数の推移
図 外国人労働者数の推移
日本で働く外国人は増え続けている
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図 政府が設けた「特定技能」の取得プロセス
図 政府が設けた「特定技能」の取得プロセス
単純労働を担う在留資格を新設
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 ガストやバーミヤン、ジョナサンなどの飲食店を全国展開するすかいらーくは、2017年3月にガスト約30店舗で電子マニュアルの検証を開始。手ごたえをつかみ、同年9月にガストの全店舗約1400店に導入した。さらに19年2月にはバーミヤンやジョナサンなどを含むグループ約3000店舗に導入対象を広げた。

 すかいらーくにとって外国人従業員はもはや「欠かせない存在」(ガスト上野広小路店の鈴木啓之マネジャー)だ。グループ内の主要なレストランで働くパートやアルバイト約8万8000人のうち、外国人は18年末時点で2300人と16年に比べて6割以上増えた。同店の場合、30人ほどのアルバイトの3~4割を外国人が占める。外国人にも分かりやすい業務マニュアルの整備という経営課題をITでクリアした。