対面などを業法で義務付け、デジタル技術活用を阻む「アナログ規制」。特に根強く残っていたのが医療分野だ。オンライン診療は対面の補助でしか使えず、対象患者も「30分で通院か訪問できる」と距離で制限していた。こうしたなか、2022年4月から医師によるオンライン診療と薬剤師によるオンライン服薬指導が解禁され、規制の多くは廃止された。ただ使い勝手を悪くするアナログ規制がいまだ残っている。
「制度の見直しは業界が希望する水準にかなり近づいた。これからはシステムベンダーと医療業界がどう普及させていけるかという現場の課題になった」。オンライン診療システム大手の1社であるメドレーは、2022年4月からのオンライン診療の制度改定を高く評価する。
オンライン診療は2015年に「離島やへき地以外でも利用できる」と厚生労働省が見解を示したことで全国で解禁された。しかし厚労省の指針ではオンライン診療はあくまで対面診療の補助的手段との位置付けであり、距離や利用頻度、金額など様々な制約があった。
2020年4月に出された、初診からのオンライン診療を解禁した「コロナ特例」(感染が収束するまでの時限的な措置)をきっかけに、政府がコロナ後を見据えて制度見直しの議論を進めたことが、オンライン診療を促進する制度見直しに結び付いた。
一連の制度見直しで、最も前進したのが診療報酬の引き上げだ。厚労大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)で2022年2月に決まった2022年度のオンラインの診療報酬は初診で2510円。対面の2880円に対して87%の水準であり、コロナ特例で設定した2140円よりも高い。再診の診療報酬は現行の710円から20円増やし、対面と同じ730円にそろえた。
コロナ特例より前のオンライン診療は、診療報酬が710円と低い再診にしか使えなかった。そのため「医療機関がオンライン診療システムの利用料を患者に請求していたケースは少なくなかった」(システム提供企業)という。つまりオンライン診療だと患者負担が対面より増えるケースがあったわけだ。診療報酬の引き上げで、2022年度からはシステム利用料を患者に転嫁しない医療機関が増える可能性がある。
「距離」「頻度」「金額」で何重にも縛られたオンライン診療の制約も撤廃する。まず前述の通り、再診のみとした制約をなくし、初診での利用を解禁する。その他の規制、例えば「30分以内に通院か訪問できる」「3カ月ごとに対面診療も併用する」「オンライン診療の割合を報酬金額ベースで1割以下に抑える」なども全て廃止する。
オンライン診療を担当するのは原則としてかかりつけ医だ。だが、かかりつけ医でない他の医師でも事前に患者の診察履歴といった医学情報を確認できればオンライン診療を担当できる。