大手牛丼チェーンの吉野家はアルバイトのシフト管理を自動化した。多様な働き方を後押しするとともに、安定した店舗運営を狙う。シフト管理の分野で実績があるクラウドと最新のAI(人工知能)を組み合わせることで、シフト表の作成から人員の補充まで賄える仕組みを作り上げた。2019年度中に400店舗への導入拡大を目指す。
2019年に創業120周年を迎えた大手牛丼チェーンの吉野家。同社は最新のAI(人工知能)技術を組み合わせたシフト管理サービスを2018年9月から使い始めた。2019年4月時点で埼玉地区の約80店舗が利用中だ。
導入から8カ月、数時間かかることもあったゼロからのシフト表の作成業務が不要になった。シフト作成が早くなったわけだ。時短が進んだのはもちろん、キャストと呼ぶパートやアルバイト店員の勤務希望を8割以上満たせる、うまいシフトを組めるようになった。
「キャストは1店舗で10人から20人にも及ぶ。勤務希望をそれぞれ募り、各自の都合を考慮してシフト表を作成する作業はかなりの負担だった」。吉野家の16号線東大宮店などで店長を務めた橋本道子管理本部採用課長はこう話す。
負担が減ったことで「キャストの教育に時間をかけられるなど、顧客満足度の向上につながる取り組みを増やせるようになった」(橋本氏)。管理業務にかかるコストを安くできた成果と言える。
勤務の多様化でシフトが複雑に
吉野家はシステムの導入前から、キャストを務める主婦や学生が家庭や学業と仕事を両立できるように多様な勤務形態を認めていた。例えば1日当たりの勤務時間を4時間以内に抑えたり、午後4時に退勤したり、週1回の勤務にしたりできる。
その結果、店長が担うシフト管理は複雑になった。入学式やクリスマスといった時期は休暇の希望が重なり、キャストを十分に確保できないケースも少なくなかった。キャストも自身の希望がかなわない場合があった。「キャストの勤務希望に応えながら、安定した店舗を運営できるようにする目的で、シフト表の自動作成機能などを備えるクラウドサービスを導入した」(吉野家の春木茂未来創造研究所未来施設・設計部長)。