「DX人材」とは何か――。デジタルトランスフォーメーション(DX)の機運が高まる中、人材の採用と育成に奔走する企業が増えている。DXを推進するための人材像はどのようなものか、どうすれば必要な人材を確保できるのか。DX先進企業への取材で明らかにする。
企業や組織でデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める人材、すなわち「DX人材」の需要が急速に高まっている。人材サービスのビズリーチによれば、同社の転職サイトにおける「DX関連求人」の数はここ2年半で約2.5倍に増えた。
求人票のタイトルか仕事内容にDX関連の業務を表す単語を含む求人数を集計した。同社の転職サイトにおける2018年1~3月のDX関連求人を1とすると、2020年7~9月は2.46だった。同期間の求人全体の指数1.54を上回る。
多岐にわたる人材像
そもそもDX人材とは具体的にどのような人材だろうか。DXに取り組むユーザー企業や人材サービス企業、情報処理推進機構(IPA)への取材を基に改めて整理した。
多くの企業が必須項目として挙げたのは、自社ビジネスとデジタル技術、両方への理解だ。例えば旭化成はDX人材を「業務知識を背景にデジタル知識を身につけている人」と定義している。経済産業省も2020年12月に公表した「DXレポート2(中間取りまとめ)」において、「自社のビジネスを深く理解した上で、データとデジタル技術を活用してそれをどう改革していくかについての構想力を持ち、実現に向けた明確なビジョンを描くことができる人材」としている。
具体的な職種は多岐にわたる。技術系では、ビッグデータの分析や活用を担う「データサイエンティスト」や、マイクロサービスなど最新のシステム設計ノウハウから機械学習などの先端技術まで精通した「アーキテクト」が筆頭だ。それ以外にもDX施策の主体がスマートフォンアプリなどであれば、顧客接点を設計する「UXデザイナー」も相当する。素早い実装に重きを置くなら「プログラマー」も枠内だ。
役職も役員クラスから現場のメンバーまで多岐にわたる。リクルートキャリアの早崎士郎マネジャーは、「DXのフェーズごとにDX部門の責任者から現場のメンバーまで様々な役割の人材が必要になる」と指摘する。取り組みの初期段階ではDXの方向性自体を決められる役員クラスの責任者が必要で、個別施策を実施して取り組みを拡大する段階は専門知識を持った現場レベルの人材が必要になるという。