新型コロナウイルスの感染拡大がアパレル業界を苦境に追いやった。大手レナウンの経営破綻は記憶に新しい。店舗の営業自粛を経験した今、力を注ぐのがEC(電子商取引)だ。SNS(交流サイト)やブログ、動画を使い消費者と親密な関係を築く。ネットを駆使した施策でファンを生むアパレル企業の取り組みを追った。
「ワイドストライプのスーツの場合、ネクタイの柄は小さいものにしたほうがVゾーンをきれいにまとめられますよ」「耐久性のある生地なので、頻繁に着たい方にお薦めです」――。
セレクトショップ大手ビームスは2020年3月27日、同社初となるライブコマースを実施した。雑誌などでも活躍する同社の有名スタッフらが動画でスーツやシャツ、ネクタイなど紳士服のアイテムやその特徴、着こなしを次々と紹介。「パンツは何を合わせたらいいか」など、視聴者が書き込む質問にリアルタイムに応対しながら商品を紹介する様子は、まるで店舗での接客のようだ。
紹介した商品はリンクからすぐに同社のECサイトに移動して購入できる。約1時間の配信で6000人以上が視聴し、100万円弱を売り上げた。在庫がなくなる商品もあり「想像以上の反響があった」と、ビームスの山村香代子コーポレートコミュニケーション室広報部副部長は手応えを口にする。
ビームスはアパレル業界で「ネットを駆使する先進企業」の1社として知られる。同社のネット施策の特徴は、徹底した自社サイトのオウンドメディア化にある。
「もともとスタッフの個性をオンライン上で表現することに力を注いでいた」(山村氏)というように、2016年から公式サイト内にスタッフの個人アカウントを設け、自らの着こなしを画像で紹介する「スタイリング」や、お薦めアイテムを短いテキストで紹介する「フォトログ」など多様なコンテンツを展開する。現在3000人強のスタッフがアカウントを持ち、投稿している。
4月20日にはスタッフが自宅時間の過ごし方をYouTubeで紹介する「BEAMS AT HOME Video」を新たに開始。動画はスパイスカレーの作り方や時短メーク術など、ビームスが販売する商品とは一見関係ないテーマばかりが並ぶ。