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「テクノロジーを活用し、不動産業そのものをイノベーション」。三井不動産は2025年に向けた長期経営方針でこうスローガンを掲げ、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めている。オフィスビルや商業施設、ホテルの開発・運営など多岐にわたる事業を展開する同社はDXの展開も多彩だ。そうした中から、新規性が高く既に成果も出始めている事業としてサテライトオフィスと試着ラウンジの事例を紹介する。

三井不動産が手がけるサテライトオフィス「ワークスタイリング」(上)と試着ラウンジ「LaLaport CLOSET」(写真:Getty Images(背景) 写真提供:三井不動産)
三井不動産が手がけるサテライトオフィス「ワークスタイリング」(上)と試着ラウンジ「LaLaport CLOSET」(写真:Getty Images(背景) 写真提供:三井不動産)
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 三井不動産がIT部門のITイノベーション部を再編し、DX本部を新設してから2021年4月で丸1年。各事業部門の担当者とDX本部がタッグを組んでオフィスビル、商業施設など多岐にわたる事業のデジタル化に取り組んできた。ここではサテライトオフィス事業と大型商業施設内で展開する試着ラウンジの事例を紹介する。いずれもデジタルを活用して、同社の「リアル」な事業の中にこれまで存在しなかったサービスややり方を創り出し、成果を上げている。

サテライトオフィス
個室需要を素早くキャッチ 専用サービスにつなげる

 三井不動産は会員制のサテライトオフィスなどを提供・運営する事業「ワークスタイリング」にデジタル技術を適用し、新サービスを生み出している。会員数は2021年5月時点で約16万人に上る。

 同社はこれまでも10分単位で利用できるサテライトオフィス「ワークスタイリングSHARE」や、「1カ月、1席」といった小規模なオフィスとして初期コストをかけずに利用できるサービスオフィス「ワークスタイリングFLEX」などを展開してきた。

 同社はこうしたサービス提供に先立ち、ワークスタイリング事業専用の管理システムを日本ユニシスと共同で開発。「ICカードなど物理カードではなくQRコードでチェックインやチェックアウトができる」「利用を始める直前でも個室や会議室を予約できる」といった機能を作り込み、会員の利便性を高めてきた。

 三井不動産が管理システムの機能と並んで重視するのが、会員の利用状況に関するログ情報だ。このログ情報が新サービスを生み出す土壌となっている。「取得できたログ情報を分析することで、会員がどのようにオフィスを利用しているのかを把握できる。それを基に新サービスを提供できた」と同社の髙木諒平ビルディング本部ワークスタイル推進部主事は説明する。