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ブロックチェーン技術といえば暗号資産。そんな発想はもはや過去のものとなった。データの改ざんを防ぐブロックチェーンの特徴を生かし、エンタメ業界の著作権管理や金融業界のデジタル証券、行政サービスまで、あらゆる場面で社会実装が始まった。企業や行政の挑戦に迫る。

(写真:Getty Images)
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 ブロックチェーン技術は暗号資産(仮想通貨)「ビットコイン」を支える技術として開発された。取引データを参加者(ノード)で共有しあい、互いに監視しながら蓄積されたデータ(台帳)を管理することで、台帳の不正な書き換えを防ぐ。この特徴をエンタメや金融、行政などのサービスに応用するために、ブロックチェーン技術を実装する動きが活発になっている。

 エンタメ業界では、エイベックス子会社であるエイベックス・テクノロジーズ(ATS)が2021年4月、NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)事業に本格参入すると発表した。NFTはブロックチェーン技術を利用したデジタル資産のことだ。

 ATSではデジタルコンテンツをNFTとして取り扱う。デジタルコンテンツの作成日時や識別番号といった鑑定書や証明書に相当するデータを管理し、唯一無二のデジタルコンテンツとして取引できるようにする。

 同社はデジタルコンテンツを構成要素(アセット)に分割して管理する。例えばミュージックビデオなら、アーティストが踊るダンス(モーションデータ)や衣装、背景、音楽といったアセットに分割し、それぞれのアセットを別々に販売できるようにする。

 また、デジタルコンテンツのファンがモーションデータを購入して、別のキャラクターに置き換えた二次創作としてデータを販売することも可能になる。こうした場合でも、NFTの仕組みを使って著作権者などのアセットの管理者(IPホルダー)に対価が支払われるようにする。

3つのブロックチェーン基盤を使う

 ATSはこうした新しい市場を実現するために、ブロックチェーン基盤上に著作権流通システムとNFT事業基盤を構築した。

 著作権流通システムは「AssetBank」と呼び、ブロックチェーン団体「Japan Contents Blockchain Initiative(JCBI)」が運営する。JCBIはATSのほか、朝日新聞や電通、博報堂などのコンテンツ関連企業15社が参画し、それぞれがブロックチェーンのノードを担う。

 IPホルダーはAssetBankと契約を締結してアセットを登録する。登録されたアセットには契約内容にひも付けた契約IDを付与する。

 この契約IDを付与したアセットを販売するための基盤が、NFT事業基盤の「A trust」である。アセットを販売する電子商取引(EC)ショップやアプリ運営企業がA trustと契約する。

 A trustはECショップやアプリ運営企業が仕入れたアセットにNFTを付与する。そうしたアセットは価値をNFTによって証明され、限定性を持たせながら流通できるようになる。

 さらにA trustでは外部のNFTブロックチェーン基盤とも連携して、アセットを販売でできるようにする。ATSは2021年5月、シンガポールに本社があるエンジン(Enjin)との提携を発表し、A trustで管理するアセットをエンジンの基盤を通じて販売できるようにする。

図 エイベックスが3つのブロックチェーンで目指す市場
図 エイベックスが3つのブロックチェーンで目指す市場
著作権者らが新たな収入、ファンも二次創作(出所:エイベックス・テクノロジーズの資料を基に日経コンピュータ作成)
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 ATS BlockChain/UGC事業グループの山本周人ゼネラルマネージャー兼事業戦略室室長は「IPホルダーとして長い時間考えて、3つの基盤を行き来する形にたどり着いた。目指すのは日本のコンテンツを世界で売っていくための仕組みだ」と話す。