推定企業価値が100億ドルを超える「デカコーン」―。日本にない巨大スタートアップとその予備軍がアジアで続々生まれている。最新のデジタル技術によって産業を変革する彼らの歩みは、デジタル変革で出遅れた日本企業にとって格好のお手本だ。既にデカコーンとなった配車サービスのインドネシア・ゴジェックや後に続く2社のCEO(最高経営責任者)に直撃した。
金融や物流にも拡大
インドネシア ゴジェック
東南アジア有数のバイク王国、インドネシア。同国で2010年に起業したゴジェックはそんなお国柄を反映して、二輪の配車サービスからビジネスを始めた。今や交通だけでなく、金融や物流など生活全般のプラットフォームになろうとしている。
創業からわずか9年で世界に18社しかないデカコーンとなったゴジェック。成功の要因は何なのか。
「事業を二輪の配車サービスから始めたことだ。四輪より二輪のほうが配車サービスは効率的だ」。創業者のナディム・マカリムCEOはこう答える。事業を二輪車を使った配車サービスに絞ったことで運転手の待ち時間を活用した宅配や料理の出前なども手掛けやすくなり、その後のスーパーアプリ(多様な機能を持つ生活全般のアプリ)戦略につなげた。
上場した米ウーバーテクノロジーズや米リフトは上場申請書の中で「配車サービス業界は競争が激しく、収益性が低い」と訴える。ナディムCEOは「彼らはほぼ配車サービスだけの会社で、かつ四輪のサービスである点に留意すべきだ。ゴジェックとは全く異なる」と強調する。
ゴジェックの総取扱高のうち配車サービスが占める割合は4分の1以下。そのうち多くは四輪からではなく二輪から生じている。利用客から得るサービス料金は四輪も二輪も大きく変わらないが「二輪のほうが初期費用も維持費用も安く済む」(同)。