決済インフラ「CAFIS」が揺れている。公正取引委員会は2020年4月に、CAFISの利用料金が10年間にわたって変わっていない点などを問題視する報告書を公表。これを受けてNTTデータは6月、CAFISの料金改定に踏み切った。キャッシュレス決済を長年支えてきたインフラに何が起こっているのか。NTTデータと関係者の取材を通して内実に迫った。

「銀行口座からのチャージ等に際し、事実上不可欠な決済インフラの料金が硬直的であることは、銀行口座からのチャージ等に係る費用を高止まりさせることにもつながるおそれがあり、ひいては、キャッシュレス普及にとって課題となっている」――。
公正取引委員会(公取委)が2020年4月21日に公表した報告書が波紋を呼んでいる。2019年来、キャッシュレス決済を巡る競争環境について調査を重ねてきた「市場の番人」は、NTTデータが1984年から運営する決済インフラ「CAFIS(キャフィス)」をターゲットの1つに据えた。冒頭はCAFISの課題について触れた報告書の一部だ。
NTTデータは2020年6月10日、CAFISの料金を見直すと発表。同年10月に値下げに踏み切る。「加盟店や消費者により理解してもらえるように価格を設定した」。NTTデータの栗原正憲カード&ペイメント事業部長はこう説明する。
民間事業者が提供するサービスの一つにすぎないCAFISに対して、なぜ公取委は名指しで課題を指摘したのか。背景にはあるのは、決済業界における存在感の大きさだ。
CAFISに接続するクレジットカード会社は約120社、金融機関は約200社。「国内ほぼ全てのクレジットカード会社や金融機関を結ぶ」とNTTデータはうたう。他にも約2000社の百貨店やショッピングセンター、約3000のEC(電子商取引)ショップが接続しており、小売店やタクシーなどが保有する接続端末は約85万台に及ぶ。
この巨大なネットワーク基盤こそCAFISが持つ最大の強みだ。企業同士で何らかのサービス連携をする際、新たな仕組みを個別に構築するには時間やコストがかかる。既に多くのプレーヤーが接続するインフラを活用した方が効率は良い。
CAFISの原点であり、今もメインの機能を担っているのがカード決済を支える共同利用型システムだ。機能拡張を続け、カード会社以外にも多くの銀行が接続し、QR決済サービスへの入金(チャージ)といった役割も担う。こうしたポジションを確立した背景には、CAFISがサービス開始以来、「多くの関係事業者が接続済み」という利点を追い風に、雪だるま式にネットワークを拡大してきた歴史がある。