日経コンピュータは今秋に創刊1000号を迎える。そこで『日経コンピュータ1000冊の背表紙を眺める会』を開いた。IT業界の重鎮、作家、大学生まで10人が参加。背表紙を読み意見交換した。1981年の創刊から38年間の大きな流れが見えてきた。ITはビジネスや社会に浸透し、人と人、人と組織を直結させた。だが担い手の考えや姿勢はさほど変わっておらず今後も挑戦が続く。
「日経コンピュータのバックナンバーほぼ1000冊をそのまま保存している。なぜ片付けないかというと背表紙に出ている特集の題名を眺めると役立つから。デジタル情報にしてしまうとそれができない」
AITコンサルティングの有賀貞一社長はこう語る。有賀氏は野村コンピュータシステム(現・野村総合研究所)、CSKの役員を歴任。現在は複数のベンチャーの役員や顧問、日本イノベーション融合学会の会長を務める。
「仕事で何か考えなければならないときバックナンバーを並べた棚の前に行き、背表紙に印刷されている特集記事の題名をざっと眺める。大きな流れが見えてきて、考えようとしている対象がどこに位置付けられるのかが分かってくる。ほぼ同じ取り組みが過去に報じられていたら、なぜそれが広がらなかったのかを検討する。そうすれば事の本質に気付ける」(有賀氏)。
1981年の創刊以来、毎号の特集をまとめるにあたって編集部は「新しいか」「プロフェッショナルに役立つかどうか」といった点を議論してきた。1000回近い議論の結果が1000冊の背表紙文字に集約されているわけで自賛になるが有賀氏が述べた効能はある。
それなら何人かで同時に背表紙を眺め意見交換してもらえば「情報化の神髄」が見えてくるに違いない。個別のやり方や事例ではなく、その奥底にある、情報に基づいてビジネス(事業や業務)を改革していく際の最重要の考えを感じ取れる、という意味である。
2019年8月4日、有賀氏の自宅で『日経コンピュータ1000冊の背表紙を眺める会』を開いた。参加者は10人、IT分野のユーザーとベンダー側の重鎮や有識者に加え、IT企業の役員を務める作家、大学生も参加した。
背表紙を眺める会の意見交換の結果を報告する。発言を名前付きで紹介することはしていない。参加者は特集を見つけて自分の思いをいわば結晶化させたわけだが、抽出された結果はもともと1000冊の中にあったからだ。