新型コロナ禍で大規模災害が起こったらどうすればいいのか――。大手損害保険会社が保険金支払いのデジタル変革(DX)を加速している。被害状況の推測、顧客からの事故受け付け、損害の査定といった災害発生からの一連の過程に人工知能(AI)やSNS(交流サイト)を活用。顧客に迅速に保険金を支払えるようにする。新型コロナ禍での災害時対応には「密」回避や非対面の工夫も必要となる。大手損保4社の保険金DXに迫る。
「もし荒川が氾濫したら、当社1社の顧客だけで数十万件の被害が出る可能性がある。社員総出で現地に向かってもとても人数が足りない」。三井住友海上火災保険の丸山倫弘損害サポート業務部企画チーム課長はこう危機感をあらわにする。損害保険ジャパンの池永敦保険金サービス企画部損害サービスグループ特命課長も「首都直下型地震が発生した場合、東日本大震災よりも被害件数が多くなる可能性が高い」と険しい表情で話す。
大手損保会社が保険金支払いに関するDXを急いでいる。地震や台風の被害が全国で相次ぎ、大規模災害がいつ首都圏を襲ってもおかしくない状況だ。人口が集中する関東を流れる荒川の氾濫や首都直下型地震が発生した場合、その被害件数は膨大になる恐れがある。さらに新型コロナウイルス感染拡大も各社がDXを急ぐ要因になっている。被害状況の把握や被災した顧客からの事故受け付け、保険金支払いの損害査定などについて、「密」回避や非対面が不可欠となるためだ。
そこで各社が導入を進めているのがAIとSNSの活用だ。大規模災害発生時の深刻な人手不足を補い、コロナ禍で求められる保険金DXについて、大手損保4社の取り組みを見ていこう。