世界3位のシェアを持つ中国アリババクラウドが年次イベントを開き、独自開発したAI(人工知能)専用の新チップセットを発表した。EC事業での商品検索、パーソナルレコメンド機能、広告、自動翻訳などアリババグループで様々な用途に利用しているという。クラウドとAIでデジタル化に挑むアリババクラウドの最新動向を伝える。
「デジタルエコノミーを深めるには、データインテリジェンス(データ分析を通じた知見の獲得)の推進がさらに重要になってくる」――。
中国浙江省杭州市で2019年9月25日から3日間にわたって開催された、中国アリババクラウド(Alibaba Cloud)の年次イベント「Apsara Conference(雲栖大会)2019」。基調講演でアリババグループのダニエル・チャン(張勇)CEO(最高経営責任者)は、ビッグデータ活用による「データドリブンなビジネス変革」を加速する姿勢を示した。
「ビッグデータは石油、コンピューティングパワーはエンジン」と見立て、両者をバランスよく活用して既存のビジネスをデジタル化していく必要があると訴えた。
杭州市に本社を置くアリババグループは、EC(電子商取引)事業やクラウドコンピューティング事業、デジタルメディア&エンターテインメント事業などを手掛ける。「あらゆるビジネスの可能性を広げる力になる(To make it easy to do business anywhere)」をグループのミッションに掲げ、ITとマーケティングを通じて自社グループと顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)に挑んでいる。
それを支えるITプラットフォームがアリババクラウドだ。2019年度(2018年4月1日~19年3月31日)の売上高は前年度比76%増の247億元(3952億円)と大きく成長している。
米ガートナーの調査によれば、アリババクラウドは米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)、米マイクロソフトに次ぐ世界3位のIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)事業者だ。アジア太平洋地域に限って見ると、AWSとマイクロソフトを抑え、IaaSおよびIUS(インフラストラクチャー・ユーティリティー・サービス)分野で2017年、18年と2年連続で市場シェア1位を誇る。
アリババクラウドの開発コンセプトの1つは「クラウドとAI(人工知能)の開発は不可分(AI is the Core of Cloud、Cloud is a Must for AI)」というもの。今年のApsara Conferenceでこのコンセプトに沿った成果物といえるAI向けの新チップセット「Han Guang 800(含光800)」を発表した。アリババグループの研究プログラム「DAMO」内のT-Headで開発した推論特化型のAIチップセットだ。
同社はHanGuang 800をハードウエアとしては販売せず、仮想マシンなどに組み込みクラウドサービスとして提供する。