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スマートフォン決済の手数料を舞台に新たな競争の幕が開いた。口火を切ったのはシェア首位のPayPayだ。無料としていた手数料を2021年10月から有料に切り替える。他社は無料キャンペーンで対抗するも、PayPayは余裕の表情だ。勝ち残りを賭けた、仁義なき手数料バトルの勝者は。
「解約件数が有料化発表前の倍になった」。PayPayの馬場一副社長はこう打ち明ける。同社は2021年8月19日、それまで無料にしていた中小加盟店向けのコード決済手数料を10月1日から有料にすると発表した。料率は加盟店向け顧客情報管理(CRM)システムの利用契約を結ぶと決済額の1.6%、それ以外は1.98%だ。中小加盟店は、飲食店の場合で利益率が数%とされる。手数料の有料化は1%台でも痛手。加盟店は値上げを嫌い敏感に反応した。
機敏なのは競合他社も同様だ。PayPayと逆に手数料の無料化を次々に打ち出した。まず楽天グループ(楽天)傘下の楽天ペイメントが8月25日、「楽天ペイ」の中小新規加盟店向け手数料を、10月1日から1年間無料にするキャンペーンを発表した。「発表後、1日当たりの申込件数が通常の10倍に増えた。もっと勢いをつけたい」。楽天ペイメントの小林重信楽天ペイ事業本部本部長はこう意気込みを語る。
KDDI(au)の「au PAY」とNTTドコモの「d払い」も加盟店向け決済手数料の無料キャンペーンを発表した。au PAYは新規・既存とも、d払いは2021年9月1日以降の新規加盟店が対象で、いずれも2022年9月末までだ。