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新型コロナ禍による航空需要の蒸発で、日本航空(JAL)とANAホールディングス(ANAHD)が苦境に立たされている。厳しい状況下でも、両社はデジタルを活用した業務革新や中長期的な航空産業の変化を見据えた新規事業など、デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資を継続している。逆境を乗り切るため2社が取り組む「航空DX」の最新動向を追った。

(写真:Getty Images)
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 新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年初頭以降、JALとANAHDは厳しい経営が続いている。国内線に限れば緊急事態宣言解除後に搭乗率は徐々に戻ってきたものの、それでも2020年10月の国内線RPK(各有償旅客の輸送距離の総和)は、JALが前年同期比46%減、ANAHDが同57%減と落ち込んだ。国際線は今も需要が蒸発した状態で、2020年10月のRPKは2社とも同95%減だ。

 経営の厳しさを如実に示すのがキャッシュフロー(CF)の推移だ。本業で現金を稼ぎ出す力を示す営業CFは、2社ともここ3~4年は年間3000億円前後で推移していた。そうして得た豊富なキャッシュを、2社は新たな航空機の購入や空港設備の改修、そしてDXなどに投資する原資としてきた。投資CFのマイナス(支出超過)幅は、JALは2000億円前後、ANAHDは2018年3月期と2019年3月期に3000億円を超えていた。

 この構造が新型コロナ禍で一変した。2020年4~9月期の半年だけで、JALは1500億円近く、ANAHDは1900億円を超える営業CFの赤字を記録。2社とも投資を大幅に絞り込まざるを得なくなった。ANAHDは航空機の受領先送りや有価証券の償還で投資CFがプラス、すなわち投資回収が新規の投資を上回る状況となっている。

図 日本航空(JAL)とANAホールディングス(ANAHD)のキャッシュフローの推移
図 日本航空(JAL)とANAホールディングス(ANAHD)のキャッシュフローの推移
堅調だった営業キャッシュフローが新型コロナ禍で赤字転落(出所:日本航空とANAホールディングスのIR資料を基に日経コンピュータ作成)
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 厳しい経営下でも、2社は対象を精査しながらDX関連投資を継続していく方針だ。JALの赤坂祐二社長は「先行投資をやっていける余裕はほとんどないが、全くやらないかというと違うと思う。難しい局面だが止まっているわけにいかない」と発言。「分野を絞り込み、リスク分散も含めてパートナーと組むなどして、苦しいながらも少しでも前に進みたい」と続けた。アフターコロナ・ウィズコロナの新たな地平を目指し「離陸」した2社の航空DXを見ていこう。