DX(デジタル変革)のためのリスキリング(学び直し)で、IT関連資格に改めて注目が集まっている。日経クロステック会員が考える「いる資格」「いらない資格」は何か。アンケート調査から、IT関連資格の最新動向を探る。
「IT資格実態調査」は日経BPの技術系サイト「日経クロステック」が2017年から会員読者を対象に実施しているものだ。6回目となる今回は、2022年9月~10月にかけて調査を行った。編集部が選んだ49種類のIT関連資格について、アンケートで資格の保有状況や役立ち度合い、今後の取得意向を調べた。
保有率トップは基本情報技術者
まず保有しているIT資格の状況を見ていく。回答者が「保有している」というIT資格をすべて答えてもらい、10人以上が保有するものについて回答数の多い順にランキングした。
最も多かったのは「基本情報技術者」で179人が保有する。「保有している」の回答率は56.1%だ。2位は「応用情報技術者」で142人(回答率44.5%)だった。ここまでの順位は、2021年9月に実施した前回調査と変わらない。
今回、「情報セキュリティマネジメント」が77人で3位に入った。24.1%という回答率は前回調査に比べて3ポイントのプラスである。前回3位だった「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」は69人(回答率21.6%)で前回に比べてマイナス2ポイントとなり、順位を1つ落とした。
上位2資格の回答率はいずれも前回調査に比べて下がった。「基本情報技術者」は5.9ポイントのマイナス。「応用情報技術者」はマイナス9.0ポイントと、全49種類の資格のうち最もマイナス幅が大きかった。応用情報技術者は前回の伸びが全49種類で最大(プラス11.5ポイント)だったことからその反動が考えられる。
上位2資格に続いてマイナス幅が大きい資格は、「プロジェクトマネージャ」(マイナス4.6ポイント)、「システムアーキテクト」「データベーススペシャリスト」(いずれもマイナス4.1ポイント)の順である。
全49種類の資格のうちプラス幅が最大だったのは「AWS認定各種(ソリューションアーキテクトなど)」でプラス8.4ポイントである。回答率が20.7%に上がり、前回の9位から6位へ順位を上げた。
今回初めて「オラクル データベース分野(ORACLE MASTER、認定MySQLなど)」を抜き去り、ITベンダー資格のトップに立った。IT資格の新旧交代が起きたといえる。
全体で見ると、IT資格の保有率は前回より下がった。「保有している」の全回答数を、今回の調査の回答者数で割った「1人当たりの資格保有数」は今回が3.60。前回は3.80、前々回は3.26だった。前々回の調査は2020年に実施したもので、新型コロナウイルスの影響により特異的に落ち込んだと考えられる。
保有率の増減を資格全体で見ると、プラスの資格が23、マイナスが22、前回と変わらないものが4と拮抗している。気になるのは国家資格のマイナスが目立つ点だ。対象となる11資格のなかでプラスなのは「エンベデッドシステムスペシャリスト」と「技術士(情報工学部門)」の2つのみである。先に紹介した「応用情報技術者」「基本情報技術者」を先頭に、「プロジェクトマネージャ」「システムアーキテクト」「データベーススペシャリスト」など、マイナス幅は決して小さくない。こうしたマイナスの影が今後深まるのかどうか要注目だ。