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共通ポイントの先駆け「Tポイント」が転機を迎えている。ファミリーマートで使えなくなる可能性が出てきたからだ。伊藤忠商事がユニー・ファミマHDを子会社にするのを機に独自ポイントの模索に乗り出した。顧客データを巡り、共通ポイントの大再編時代が始まる。

「Tポイントカードはお持ちですか」 との合い言葉が聞かれなくなるのか
「Tポイントカードはお持ちですか」 との合い言葉が聞かれなくなるのか

 「大きなテーマの1つ。色々な選択肢がある」。2018年4月19日、都内で記者会見した伊藤忠商事の鈴木善久社長COO(最高執行責任者)は独自ポイントを始める可能性を問われこう答えた。さらに「年内をめどに方向付けをしていきたい」と踏み込んだ。

 伊藤忠は2018年8月ごろに、約1200億円を投じてTOB(株式公開買い付け)を実施し、ユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)への出資比率を41.45%から50.1%に引き上げる。4月に社長に就いたばかりの鈴木氏にとって、ユニー・ファミマHDの子会社化は社長として初の大きな経営判断といえる。

 狙いはセブン&アイ・ホールディングスの後塵を拝するユニー・ファミマHDの小売り事業を、伊藤忠主導で立て直すことだ。特に中核のコンビニエンスストア事業で首位のセブン-イレブン・ジャパンの背中は遠く、てこ入れは急務だった。

「Tポイントの利用料に不満」

 ユニー・ファミマHDの子会社化へと伊藤忠を突き動かした、隠れた狙いがある。ポイントを中心にしたデータベースマーケティングの戦略を見直すことだ。

 ユニー・ファミマHDはファミリーマート時代の2007年から、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が手掛ける「Tポイント」を採用してきた。ファミマとCCCはTポイントを通じて集めた顧客の属性や利用履歴を分析し、二人三脚で商品開発やマーケティングに生かしてきた。ファミマを中核に提携先も182社に広がり、会員数は6500万人を超える。

 Tポイントのライバルの共通ポイント「楽天スーパーポイント」を採用していたサークルKサンクスとファミマが2016年に経営統合した際も、結局はTポイントに一本化した。楽天は楽天スーパーポイントとTポイントの併用を提案していたが、CCCがTポイントへの統合で押し切った経緯がある。

 蜜月の関係に見えていたが、実は伊藤忠は「成長への足かせになりかねない」と危機感を抱いていた。ファミマがTポイントの会員属性や利用履歴といった顧客データを使うには、CCCに原則として利用料を払う必要がある。ファミマもマーケティングに利用できるとはいえ、主導権はあくまでCCCにある。CCCに顧客データを抑えられたままでは、グループの小売り事業を強化するため商品開発やマーケティングに生かそうにもコストと時間がかかりすぎると判断したようだ。伊藤忠の関係者は「CCCにとってファミマを通じて得られる利用履歴は競争力の源泉だったはず。にもかかわらず、データの利用料がかさむことが我々としては不満だった」と明かす。

 既に伊藤忠はデータベースマーケティング戦略の再構築に向けて動き出している。2017年9月には独自ポイントや電子マネーなどの開発を視野に、ユニー・ファミマHDと共同出資会社を設立。セブン&アイなどをFinTech事業で追い上げる狙いだ。

ファミマ、Tポイント離脱も

 伊藤忠が独自ポイントを始めるとなると、ファミマにおけるTポイントの扱いはどうなるのか。大きく2つのシナリオが考えられる。

 1つはTポイントの扱いを取りやめるシナリオ。同陣営からの離脱である。独自ポイントに一本化すれば顧客データを扱いやすくなり、商品開発やマーケティングの機動力は格段に増す。

 一方でCCCと二人三脚で築き上げた顧客基盤を失うことになりかねない。ファミマだけでなく、ユニーや資本・業務提携するドンキホーテホールディングスなどに独自ポイントを広げたとしても、Tポイントの顧客基盤を失うデメリットは小さくない。

 もう1つのシナリオは独自ポイントとTポイントの相乗りだ。Tポイントの顧客基盤を引き継げる半面、顧客のデータが独自ポイントとTポイントに分散する欠点がある。「相乗りはデータベースマーケティングにおける共通ポイントの最大の魅力を弱める」(業界関係者)。

 ファミマとCCCのTポイントに関する契約更新のタイミングは2018年末とされ、ここが大きな節目になる。他の共通ポイント事業者も秋波を送っており、3つ以上のポイントが相乗りする可能性もある。