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IT業界で「実在性に疑義のある取引」が相次ぎ判明した。ネットワンや日鉄ソリューションズ、東芝ITサービスなど5社だ。複数社で売り上げなどを水増しする「循環取引」の疑いが浮上している。

 発端は東芝の2020年1月18日の発表だった。子会社の東芝ITサービスで「実在性に疑義のある取引」が複数年にわたって行われていた可能性があり、その規模は2019年4~9月期で約200億円を見込むとした。東芝ITサービスの2019年3月期の売上高は440億円なので、実に半分弱を占める計算になる。

 さらに衝撃だったのは、「東芝ITサービスの主体的な関与を認定する証拠はこれまで検出されていない」とした点だ。複数の企業間で実態のない取引を繰り返し、売り上げや利益を不正に水増しする「循環取引」だったと明らかにした。東芝ITサービスは他社に循環取引を持ちかける立場になく、巻き込まれたと弁明した。

図 IT業界で「実在性に疑義のある取引」が相次ぐ
図 IT業界で「実在性に疑義のある取引」が相次ぐ
複数社による「循環取引」の可能性が浮上している
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ネットワン担当者が主導か

 信用調査会社によると、東芝ITサービスの主要取引先にはネットワンシステムズや日鉄ソリューションズなどが名を連ねる。折しもネットワンシステムズと日鉄ソリューションズは国税当局の税務調査で一部取引について実在性に疑義があるとの指摘を受け、それぞれ2019年12月13日に特別調査委員会を設置すると発表していた。両社が東芝ITサービスの循環取引に関与していた可能性が俄然、高まった。日経コンピュータの取材によれば「ネットワンシステムズで官公庁を担当していたX氏が循環取引を主導した」との指摘も出ている。

 2020年1月24日には富士電機子会社の富士電機ITソリューション、みずほリース子会社のみずほ東芝リースの2社でも実在性に疑義のある取引がそれぞれ判明した。富士電機は「取引の金額は軽微」、みずほリースは「1件の取引で判明」と説明。そのうえで、両社とも「実体のない架空取引と認識していたことを示す事情や証拠は認められなかった」として、やはり巻き添えであると示唆した。

 各社は弁護士や会計士などで構成する調査委員会で詳細を調べている最中であり、東芝ITサービスの循環取引への関与を含め、記事執筆時点で「回答できない」としている。それぞれが2月中旬までに開く決算説明会で業績への影響や調査結果などを詳しく説明するとみられ、真相の解明はこれを待つことになりそうだ。

あしき慣習を改めるべき

 IT企業による循環取引はこれまで、ニイウスコーやアイ・エックス・アイ(IXI)、メディア・リンクスなどでも判明し、度々問題となってきた。IT業界の「あしき慣習」がまたしても表面化した格好だ。

 過去の例を見ると、動機は「業績不振の隠蔽」や「過大なノルマ」など様々。ネットワンシステムズは営業の歩合が大きいことで知られ、担当者が「報酬目当て」で不正に及んだ可能性がある。

 IT企業が提供するソフトウエアやサービスは目に見えない無形なものが多いうえ、多重の下請け構造で取引の流れも分かりづらい。会計監査で不正を見抜くのが難しく、それだけに不正を誘発しやすいとされる。SMBC日興証券の菊池悟シニアアナリストは不透明な取引が起こる根本的な原因として、ハードやソフトを何段階も経由して流通させる業界の体質を挙げる。「ここを改めなければ同じことが繰り返され、ユーザーも不要な高いコストを払うことになる」と指摘する。

 ニイウスコーの事件では元会長が逮捕された。メディア・リンクスの循環取引では影響を受けた伊藤忠テクノサイエンス(現・伊藤忠テクノソリューションズ)が過去に遡って決算を修正し、親会社の伊藤忠商事まで修正を余儀なくされた。

 今回、疑わしい取引が明らかとなった5社も少なからぬ影響を受けるのは必至だ。東芝ITサービスをはじめ、一部の企業は複数年にわたることが判明しており、業績への影響額はさらに膨らむ可能性が高い。詐欺罪や特別背任罪、有価証券報告書虚偽記載罪などで刑事事件への発展も考えられる。顧客への心象も悪く、官公庁などの入札では指名停止措置も想定される。

表 今後のスケジュール
2月中旬までに真相が明らかとなるか
表 今後のスケジュール
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