2019年10月1日の消費増税まで残り半年強となった。軽減税率の対象となる食品を扱う小売業は準備に忙殺されている。店内飲食やポイント還元について、具体策を決めていないところも多い。
小売業が消費増税に伴ってシステム対応すべき内容は主に3つある。1つ目は二重税率への対応だ。
軽減税率(8%)対象の食品と、対象外(10%)の日用品や衣類などを区分し、POS(販売時点情報管理)レジや店頭の価格表示に反映する必要がある。これについては2016年6月に政府が増税の延期を表明した前から必要性が指摘され、準備はそれなりに進んでいた。
2つ目は顧客が食品を購入した際の店内飲食に関するシステム対応だ。持ち帰るか、店内で飲食するかによって税率が変わる。店内飲食は軽減税率の対象外だ。
店内のイートインスペースが広がり始めたのは2017年ごろからで、システムの準備はあまり進んでいない。国税庁によれば、小売業はレジで顧客に店内飲食か持ち帰りかの意思を確認し、軽減税率の適否を判定する。
システム上の対応は容易に思えるが、2019年2月末時点で「対応方法を検討中」(セブン-イレブン・ジャパン広報)、「顧客が混乱しない分かりやすい対応を考慮する」(ローソン広報)と、大手でも具体策が決まっていない。
日本チェーンストア協会(JCA)は「小売業は顧客の公平性をどう担保するかで悩んでいる」(広報)と説明する。自己申告に頼る以上、「持ち帰りを申告して8%しか払わなかった人」が店内で飲食する事態も起こり得る。他の顧客から苦情があれば対応に苦慮しそうで、解決策を模索しているという。
降ってわいたポイント還元
さらに不透明なのが3つ目のキャッシュレスポイント還元対応だ。
政府は2018年末に増税の悪影響を緩和する目的でポイント還元策を打ち出した。中小・小規模店の顧客がキャッシュレス決済で支払った場合、個別店舗は購入金額の5%を、フランチャイズチェーン加盟店などは2%をポイントとして政府が還元する。2019年度予算案に約2800億円を計上し、2月末時点で国会審議中である。
小売業はクレジットカード会社などと連携して還元処理を確実に実行したり、還元割合を店頭やレシートに表示したりする必要がある。制度が未確定とあって、小売業の準備は進んでいない。
「中小加盟店も直営店も一律のポイント還元をするとの意思は示したが、具体的な準備はこれから」(セブン広報)、「対応を検討中」(ローソン広報)といった状況だ。