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情報処理推進機構(IPA)は2023年2月9日、「DX白書2023」を公開した。日米企業におけるDX(デジタル変革)の最新動向などをまとめたもので、日本ではデジタル化が進む一方で「変革」が停滞している現状が浮き彫りになった。

 「DXに取り組んでいる日本企業は確実に増加しているが、米国企業との差はまだ大きい」。IPAの古明地正俊社会基盤センターイノベーション推進部部長はDX白書2023の内容を踏まえてこう指摘する。

 今回公表した2022年度の調査で、DXに取り組んでいると回答した日本企業の割合は合わせて69.3%。前年度比13.5ポイント増だった。しかし、このうち「全社戦略に基づき」DXに取り組んでいると回答した割合の合計は米国企業に比べて13.9ポイント低い54.2%だった。さらに、DXに取り組み「成果が出ている」と回答した日本企業の割合は、米国企業に比べて31.0ポイント低い58.0%だった。

図 DXの取り組み状況
図 DXの取り組み状況
「全社戦略に基づき」DXに取り組む日本企業の割合は米国より低い(出所:情報処理推進機構の資料を基に日経コンピュータ作成)
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全社推進体制と人材確保で大差

 DX白書2023の調査では、DXの取り組み内容として「アナログ・物理データのデジタル化」「業務の効率化による生産性の向上」といったデジタイゼーション/デジタライゼーション関連の施策と、「新規製品・サービスの創出」「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」といったデジタルトランスフォーメーション(変革)と呼べる施策の状況を尋ねている。古明地部長は日本企業について「デジタル化は少し進んできてはいるものの、本質的な変革は進んでいない」と指摘する。

 こうした日米の差が生まれる背景は何か。DX白書2023の他の調査結果をみると、日本企業が、DXの全社推進に関する施策や、DXの担い手である人材の確保で、米国企業に後れを取っている現実が浮き彫りになっている。

 DXの全社推進に関する施策については、DX白書2023の調査結果から、「経営層のITに対する理解」「経営者・IT部門・業務部門の協調」「全社員による危機意識の共有」などの取り組みが、日本企業において不十分であることが見えている。こうした施策なしには、DXの担い手である社員のモチベーションは高まらず、DXは途中で頓挫しかねない。

 DX人材に関する施策でも、DX白書2023の調査で、日米で大きな差がついている。2022年度、自社で確保できているDX推進人材の量について尋ねたところ、米国では「やや過剰である」「過不足はない」と回答した企業の割合は合わせて73.4%だったが、日本では10.9%だった。むしろ日本では「不足している」と回答した企業の合計が83.5%と際立った。古明地部長は「企業でDXへの取り組みが増えるにつれ、人材不足が目立ってきているのではないか」と話す。