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新型コロナ対策に有効なITサービスを無償提供する動きが広がっている。リモートデスクトップやWeb会議などの「定番」だけではない。人材採用や新人研修の支援など、60種類超のツールを紹介する。

 様々なITベンダーが2020年2月下旬から、有償の製品・サービスを一定の条件下で無償提供する動きを始めている。多く場合は2020年4月末までなど期限を区切っている。本誌の調べでは3月10日時点で60種類以上のITサービスが無償提供されている。

 新型コロナウイルス対策として、テレワークを推進したり採用活動をオンラインに切り替えたりするユーザー企業が出てきているが、テレワークやオンライン採用を「今から始める」「初めて取り組む」ケースも少なくない。そうしたユーザー企業にとっては、無償サービスが助けになりそうだ。

 最も多いのがテレワークを支援するための製品やサービスだ。Web会議サービスなど導入の手間が比較的少ないコミュニケーションツールが多い。ビジネスチャットや資料共有なども無償で使えるようになっている。

 会社のパソコンに直接アクセスできるようにするリモート・アクセス・ツールや、仮想デスクトップを構築するためのツールなども無償提供されている。内線電話を社外で受けられるようにするサービスもある。

 Web会議の分野で目立つのはペーパーレスの会議を支援するための製品やサービスだ。紙の資料を社外に持ち出さなくても、セキュリティーを担保したままオンラインで閲覧できるサービスを無償提供する企業が続々と登場している。例えばアステリアの「Handbook」はモバイル端末上で紙の資料と同様に指でめくる動作で資料を閲覧できる。

「Office 365」を6カ月無償提供

 大手ベンダーでは日本マイクロソフトが「セキュアリモートワーク相談窓口」を設置するとともに、「Office 365」の企業向けの「E1」ライセンスを6カ月間無償提供し始めた。Web版のオフィスソフトやWeb会議ツール、オンラインストレージなどが利用できる。

 相談窓口ではビジネスチャットツール「Microsoft Teams」の利用方法のトレーニングや、「Microsoft Teams Live Event」を利用したビデオ会議の支援といったサービスを提供する。電話相談のほか、セットアップガイドやマニュアルなども提供する。今回の相談窓口の設置は日本マイクロソフト独自の施策という。「日本企業向けにはライセンスの無償提供だけでなく、導入支援サービスがあったほうがいいと判断した」と日本マイクロソフトは説明する。Office 365のE1ライセンスの無償提供は米マイクロソフトが全世界を対象に始めたものだった。

オンライン面接ツールなども

 採用活動の本格的な盛り上がりを目前に控え、オンライン面接を支援するツールの無償提供も始まっている。録画機能などを持つ製品もある。4月に入社する新人社員向けのeラーニングツールなども無償提供されている。

 日常業務を支援するための製品やサービスにも無償化は広がる。特に多いのは顧客からの問い合わせ対応支援だ。新型コロナウイルスに関連した問い合わせの自動化を支援するのが主な目的だ。

 マネーフォワードは請求書発行などを支援する「クラウド請求書」を、マルチブックは海外拠点向けの会計クラウドサービス「multibookクラウド会計・ERP」をそれぞれ無償提供する。

 無償提供サービスの中には、自治体を支援するものもある。FAQサイトの構築を支援したり自治体に特化したコミュニケーションを提供したりする。例えばユーザーローカルが自治体などの公的機関向けに用意したサービスを使うと、厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A」に準拠したチャットボットを各機関のWebサイトに設置できる。

 政府指示の下、様々な「中止」が広がっている。リモートでの働き方が広がりを見せるなか、スマートグラスを利用した遠隔作業の支援や企業向けのオンライン診療サービスなどもある。「この業務はリモートでは不可能だ」とすぐに諦めずに、まずはツールを探してみるのがよさそうだ。