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2024年度入社の新卒採用で、IT人材の争奪戦が激しさを増している。優秀な学生を獲得するため、ITサービス大手の多くが初任給を引き上げる。非ITの大手事業会社は3割以上がIT人材の採用枠を設ける。

 2024年春に卒業予定の大学生らを対象とした会社説明会が2023年3月1日に解禁され、採用活動が本格化した。IT人材となる優秀な学生を獲得するため、企業はどのような施策を講じているのか。日経クロステックと日経コンピュータによる調査の結果から、初任給の引き上げのほか、事業会社におけるIT人材の別枠採用などの施策が浮かび上がった。

CTCは初任給6万5500円アップ

 ITサービス大手の調査では、10社に対して2023年3月にアンケートを実施した。その結果、多くのITサービス大手が初任給アップを講じていることが分かった。伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は2023年4月入社から、従来は23万円だった大卒初任給を6万5500円アップの29万5500円へ引き上げる予定だ。TISは2023年4月から基本給を平均6%、若手層などに対しては最大で17%引き上げることを決めた。大卒初任給は2万7000円上げて25万円にする。

表 ITサービス大手10社の新卒採用予定数と初任給引き上げに関するアンケート回答
IT大手が続々と初任給アップへ(出所:各社のアンケート回答を基に日経コンピュータ作成)
表 ITサービス大手10社の新卒採用予定数と初任給引き上げに関するアンケート回答
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 ITサービス大手からの回答でもう1つ目立った共通の施策は「ジョブ型」の人事制度との連動だ。日立製作所は2024年度入社の新卒採用から「プレゼン選考」を本格導入するなどして、応募者が就職活動時に持っていたキャリア観を、入社後の自律的なキャリア形成につなげてもらう。

 このプレゼン選考は、最終選考の冒頭の5分間で、学生が「入社後にどの職種で、日立のリソースを用いてどのように社会課題の解決に取り組みたいか、それはなぜか」についてプレゼンテーションを実施し、その内容を基に面接担当者が応募者の将来志向やキャリア観、強み・行動特性、希望職種とのマッチングの3点を引き出していくものだ。日立は社員の自律的なキャリア形成を促すため、ジョブ型の人事制度の導入を進めており、新卒採用にもジョブ型を適用した形といえる。

 NECは2024年度の新卒採用から「ジョブ型採用」を新たに導入する。学生は受けたい部門や職種を選んで受験し、合格となれば初期配属を確約する。一般に入社後に希望する部署や職種に配属されないケースがあることは、学生が「配属ガチャ」と呼んで敬遠する傾向にある。「配属ガチャを回避し、自分でキャリアを決めたいと考える優秀な学生の獲得施策として導入する」(NEC広報)。

 富士通も「よりビジネスニーズにフィットした人材を獲得するため、新卒もジョブ型に移行していく方針」(同社広報)という。入社前からキャリアイメージを描けるよう、インターンシップの受け入れ拡大や内定後のマッチングなども強化する。