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森友学園を巡る公文書の改ざん問題を受けて電子決裁導入が動き出した。総務省発表の電子決裁率は90%を超えるが、実態はもっと低い。安倍晋三首相の指示を「改ざん」しない実行力が問われる。

 「今年度から適用される公文書に関する新たなガイドラインによる厳格なルールを徹底するとともに、電子決裁システムへの移行を加速していく」。安倍晋三首相は2018年4月2日、政府与党連絡会議でこう決意を述べた。これに先立つ3月23日には全省庁が電子決裁システムへの移行を加速するなど、公文書管理の信頼向上に取り組むよう指示した。学校法人「森友学園」に国有地を払い下げた決裁文書の改ざん問題を受けた措置だ。

 公文書の電子決裁導入に向けて動き出したのは総務省と内閣官房だ。省庁横断の電子決裁システムを2012年に稼働させた総務省は普及状況を改めて調査し、未導入の部署の実態や課題を洗い出す。業務の特殊性などから困難な場合を除き、原則として電子決裁システムを導入させる方針だ。

図 安倍晋三首相の指示を受けた公文書改ざん防止の取り組み
図 安倍晋三首相の指示を受けた公文書改ざん防止の取り組み
電子決裁システムの普及を加速
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対応PCがない部署は集計から除外

 ようやく動き出した電子決裁の導入だが道のりは平坦ではない。総務省によると府省全体の電子決裁システムの導入率は2016年度に91.4%。数字上はかなり普及しているように見える。

 しかし実態は抜け穴が多い。総務省の集計は「対応PCが部署にない」など利用環境が整っていない部署での決裁文書を集計から除外しているからだ。

 除外した文書数が特に多いのが厚生労働省や防衛省だ。両省とも総務省集計による電子化率は90%を超える(本省のみで集計)。しかし厚労省は集計対象の35万2186件のほかにほぼ同数の33万5244件が「電子化できない部署」での決裁だとして除外された。これを母数に加えると電子化率は50%を下回る。防衛省にいたっては集計対象の14万1047件に対し、集計外の決裁文書は10倍超の186万7924件もある。実質的な電子化率は10%未満だ。

 総務省の電子決裁システムは「省庁のLAN環境につながったPCなら利用できる」(行政管理局)ため利用環境の制約は小さい。総務省は実態把握とともに未導入部署が抱える課題を解決していく必要がある。

 内閣官房は森友問題の発覚を受けて改訂された公文書管理のガイドラインを各省に浸透させる。新ガイドラインは決裁文書のほかに、意思決定に関わる関連文書も公文書として扱うなど、長期保存が必要な公文書の範囲を拡大。職員への研修も義務付けた。

 内閣官房は各省の取り組みをフォローするほか、共通で使えるeラーニングの教材を作成中だ。文書作成に多く関わる一般職員向けと決裁する機会が多い課長級向け、文書管理の責任者向けの3種類を用意する。

 目標を掲げたものの実態が伴わなければ、安倍首相の指示を「改ざん」する結果となってしまう。総務省と内閣官房の実行力が問われる。