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緊急事態宣言を受け、多くのIT企業が社員の出社方針を見直した。テレワークを「推奨」から「原則実施」に切り替える動きが目立った。だが、顧客企業に常駐する社員へのテレワーク適用にはハードルがある。

 日経コンピュータは2020年4月7日の緊急事態宣言の発令を受け、IT各社における社員の出社方針を調査した。テレワークはこれまで「推奨」が多かったが、「原則実施」に切り替える動きが目立ってきた。顧客企業に常駐してシステムの開発や運用に携わる社員についても、テレワークへの切り替えを働きかける姿勢を強めていることが分かった。

 「緊急事態宣言を踏まえ、指定地域で勤務する全社員に在宅勤務の徹底を指示した。これは社内、客先常駐の区別はない」――。NECはこれまで在宅勤務を「指示」してきたが、緊急事態宣言を受けて「徹底」の水準に引き上げた。ただ「例外的に社会機能を維持するための業務などについては客先への常駐を含め、最低限の出勤を実施している」(同)という。

 発注元・委託先という関係とは別に情報システムが社会インフラを支えるようになった今、客先常駐社員まで「一律テレワーク」とはできない難しさがある。顧客企業がパンデミックや自然災害といった事態に備えたBCP(事業継続計画)を整備し切れていないケースもある。

SCSKは常駐社員を必要最小限に

 日経コンピュータが緊急事態宣言の発令前の2020年3月に実施したアンケート調査では、多くのIT大手が客先常駐社員の扱いについて「基本的に常駐先の方針に従う」と回答していた。SCSKは緊急事態宣言を受け、4月7日に方針を変えた。常駐先の指示に従うことを前提に、「原則として事業継続に必要最小限の業務と人員に抑える」(広報)ようにした。

 4月7日から全社員を対象に「原則テレワーク」とした日本ユニシスは「常駐先一律ではない」と前置きしたうえで、緊急事態宣言発令前から常駐先と協議しており、テレワークに移行可能な業務は準備が整い次第、順次切り替えている。テレワークでは対応できず出社が必要な業務については「所属長との十分な協議の下、時差出勤などを活用して対応している」(広報)。

 NTTデータ、TIS、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、野村総合研究所(NRI)、富士通は緊急事態宣言を受けても客先常駐社員の出社方針については特に変えていないという。富士通は「外出自粛要請がある地域の事務所は原則テレワークとし、常駐者についても客先と協議のうえ、対応を決める方針に変わりはない」(広報)とした。

 NTTデータは「顧客の理解を得たうえで可能な限り在宅勤務にできるよう調整している」(広報)。ただ「重要な社会インフラを支えるシステムを多数運用しており、全業務を一律テレワークで代替できる状況ではない」(同)との回答だった。

表 IT各社における社員の出社方針(2020年4月9日時点)
客先常駐社員まで「一律テレワーク」とはできない難しさがある
表 IT各社における社員の出社方針(2020年4月9日時点)
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IBMはパソコンを支給

 日本IBMは新型コロナウイルス対策として2020年1月31日に全社員に在宅勤務を「推奨」し、2月25日には「強く推奨」に切り替えて在宅勤務を基本としている。客先常駐社員はマスク着用など顧客の指導の下、業務に当たっていたという。

 4月1日には緊急事態宣言の発令を見据え、全社員に在宅を「要請」するとともに客先常駐社員も顧客と協議を進めて在宅勤務に切り替えた。協力会社のエンジニアが使用するパソコンのセキュリティーの安全基準が問題になる場合には、基準を満たすパソコンをIBMが提供するなどして在宅勤務ができるようにした。

 ただし、緊急事態宣言の発令後も取り扱うデータの機密管理上、客先で勤務を続けなければいけないエンジニアは存在する。この場合は勤務環境の整備を進め、エンジニア同士の「距離を空ける」「フロアを分散させる」「シフトを組んで勤務時間を分ける」といった工夫で対処している。