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サイト閲覧者のパソコンで仮想通貨を採掘するスクリプト「コインハイブ」。設置したサイト運営者を横浜地方裁判所は無罪としたが、検察は控訴した。何がウイルスに当たるのか、法解釈が東京高等裁判所での争点となる。

男性の弁護人として無罪判決を掲げる平野敬弁護士
男性の弁護人として無罪判決を掲げる平野敬弁護士
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 サイト運営者の男性はWebサイトの閲覧者の同意を得ずに、仮想通貨「Monero(モネロ)」の取引履歴の承認作業などを行わせるマイニング(採掘)用のプログラムコード(JavaScript)を設置して、不正指令電磁的記録保管罪に問われた。報酬を得る目的だった。

 横浜地裁が2019年3月に言い渡した判決はコインハイブについて、一般的に認知されておらず閲覧者が実行を承諾したとは言えないとして、「人の意図に反する動作をさせるプログラムに該当する」とした。しかし一方で、有益性などを考慮すると刑事責任を問うのは行き過ぎで、不正な指令に当たるとは言えないとして無罪とした。

無罪判決に問題点も

 無罪を言い渡した横浜地裁の判決について、コインハイブを「意図に反する動作をさせるプログラム」に当たると認定したことに法解釈上の問題点を指摘する見方も少なくない。

 刑法が専門の石井徹哉・千葉大学大学院専門法務研究科教授は判決文が示した論理構成について「基本的には意図に反する動作をするものは原則ウイルスに該当するけども、例外として社会的に許容するものがあるから除外するという形だ」と指摘する。

 そのため「サイトに有益性や利便性などがないような場合、『不正な指令を与えるもの』と認定されてしまう恐れがある」(石井教授)と懸念を示す。単なるいたずら目的のプログラムでも刑事罰の対象になるというわけだ。実際に2019年3月、いたずら目的で電子掲示板にサイトへのリンクを書き込んだとして摘発が相次いだ。

 石井教授は「意図に反する動作について、何らかの被害を与える可能性があるものかどうかに着目すべきだ。取り締まる側の理解を変えてもらうしかない」と指摘する。何らかの実害を与える可能性を踏まえて判断する必要があるという意見だ。

 横浜地裁の判決について「法解釈に誤りがある」という指摘もある。

 高木浩光・情報法制研究所理事は「本来の法解釈ではプログラムに対する社会一般の信頼という保護法益を踏まえて、そのような信頼を害するものであるか否かという観点から判断するべきだとしている」と指摘する。

 そのうえで、判決や検察側の論告求刑について「意図に反するものは保護法益を侵害すると解釈してしまっている」(高木氏)と批判する。さらに高木氏は「そもそも『動作』という規定が何を指すのか解釈の違いもある」と指摘する。「意図に反する」とは動作の目的も含むのかという論点だ。

 検察側は4月10日に控訴した。そもそも何がウイルスに当たるのかという刑法の法解釈が、東京高等裁判所での争点となる。