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日本が初めて議長国を務めた20カ国・地域(G20)首脳会議が閉幕した。IT分野では、データ活用に向けた国際的な政策討議の促進を盛り込んだ。各国の利害対立が激しくなる中、協調に向けた議論のバトンをつないだ。

 2019年6月28~29日に開かれたG20首脳会議(大阪サミット)が首脳宣言を採択して閉幕した。IT分野では「データの潜在力を最大限活用するため、国際的な政策討議を促進する」という文言を盛り込んだ。

G20閉幕後の議長国記者会見で成果を語る安倍晋三首相
G20閉幕後の議長国記者会見で成果を語る安倍晋三首相
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 安倍晋三首相が閉幕後の議長国記者会見で強調した成果は、プライバシーやセキュリティーを保護しながら国境を越えたデータの自由な流通を確保する国際的なルール作りの推進に貢献した点だ。名称こそ首脳宣言に登場しないものの、議論の枠組みを「大阪トラック」と名付け、「世界貿易機関(WTO)改革の流れにも新風を吹き込むもの」とした。

 安倍首相は2019年1月の「世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)」で「信頼性ある自由なデータ流通(データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト)」を提案した。同概念を首脳宣言に盛り込み、人間中心の人工知能(AI)を実現する環境作りに取り組むとした拘束力のない「AI原則」も付属文書としてまとめた。

 GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)など米国の巨大IT企業への課税強化が焦点となる「デジタル課税」についても、経済協力開発機構(OECD)が2019年5月末に「2020年末まで最終報告書を策定する」とした作業工程を承認した。

利害対立の火種は残ったまま

 もっとも、データ流通に関しては、2019年1月のダボス会議で78カ国・地域がWTOの改革に向けて電子商取引に関する国際的なルール作りを進めるとした共同声明について、首脳レベルで初めて確認したという位置づけにすぎない。2019年7月に予定するWTO電子商取引有志国会合や、2020年6月の第12回WTO閣僚会議までの交渉で実質的に進める計画だ。

 デジタル課税についても、サービスの利用者だけがいる国でも一定の税収を得られる新しい仕組みを米国や英国、新興国がそれぞれ提案しており、国際課税ルールの原則を見直すといったことが既に決まっている。首脳宣言はこうした議論を確認する内容にとどまった。つまり、データ流通もデジタル課税も国際ルール作りの具体化はこれからが本番になる。

 一方、米中など各国の利害対立の火種は残ったまま。G20の「デジタル経済に関する首脳特別イベント」では、中国の習近平国家主席の発言に対し、ドナルド・トランプ米大統領が激しくけん制する場面も見られた。安倍首相は「対立ばかりが強調されがちな中にあって、共通点や一致点を見いだして具体的な行動へと移していく大きなきっかけにすることができた」とも語った。だが、真の成果はこれから問われることになる。