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政府は2019年6月にマイナンバーカードの大胆な普及方針を示した。3年後にほとんどの住民がカードを持つと想定。事実上の「義務化」と取れる。カード普及の施策として自治体ポイントや納税手続きなどを活用する。

 マイナンバーカードの取得が事実上の「義務化」に向かっている。政府がカード普及の方針に「2022年度中にほとんどの住民がマイナンバーカード(個人番号カード)を保有することを想定」との一文を盛り込んだからだ。方針は2019年6月4日に菅義偉官房長官が議長を務めるデジタル・ガバメント閣僚会議が公表した。8月をめどに具体的な工程表を示すとしている。

図 マイナンバーカードの普及策と用途
図 マイナンバーカードの普及策と用途
カードの取得を促す(出所:デジタル・ガバメント閣僚会議などの資料を基に日経コンピュータ作成)
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 この方針が出た直後の6月12日、市町村から委託を受けてカードを発行する地方公共団体システム機構(J-LIS)が「個人番号カード用ICカード製造業務等」として合計5500万枚の入札公告を出した。

 この5500万枚に過去に発注した約2910万枚を合わせると約8410万枚に達する。人口約1億2000万人の7割がカードを持つ想定だ。

電子政府にはカードが不可欠

 マイナンバーカードは顔写真付きの身分証として本人確認に使える。カード内蔵ICチップに搭載した「公的個人認証サービス(JPKI)」を使えばインターネット上で本人確認ができる。政府は行政サービスなどを誰もがネットで受けられるようにするにはカードの普及が不可欠とする。6月4日に公表した方針には様々なカード普及を促す施策を盛り込んだ。

 1つは自治体ポイントだ。政府は2019年10月の消費増税に伴う消費の落ち込みを防ぐ策として2020年度から自治体ポイントを導入する。企業のポイントから移行したり自治体が付与したりするポイントで、商店街や特産品サイトでの購入代金などに充てられる。早期のカード申込者に対してポイント割り増し付与なども検討する。

 2020年10月から始まる納税手続きのデジタル化にも活用する。年末調整や確定申告に必要な保険料控除証明書などの情報について、マイナンバー制度の個人向けポータルサイト「マイナポータル」を通じて自動入力できる仕組みを構築するという。

 2021年3月にはマイナンバーカードを健康保険証として使える制度の本格運用を始める。カードの読み取り端末やシステムなどを早期に整備して2022年度中に「おおむね全ての医療機関」に導入するとした。

 政府関係者も義務化に言及する。平井卓也IT担当大臣は6月、日経コンピュータの取材に応じ、行政サービスなどのデジタル化にはカードが必要だと指摘。そのうえで「消費増税後に自治体ポイントを付与する政策との整合性から言うと、カードを持たないと不公平になる。罰則のない事実上の義務付けがあった方がいいのではないか」と持論を展開した。

 ただし現状、カードを個人の意思で取得するルールに変わりはない。普及の鍵はデジタル化による利便性を住民に理解してもらい、カードを取得したいと思ってもらうようにすることだ。