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イオンリテールが次世代店舗「スマートストア」の展開を始めた。人工知能(AI)によって、来店客の行動を分析し店員に接客を指示する。日持ちしない食品の値下げ額決定も自動化し、廃棄ロスの低減を図る。

 イオンリテールがAIを駆使したスマートストアの戦略を加速させている。2021年6月8日、埼玉県川口市の「イオンスタイル川口」を同社初のスマートストアとして開店。売り場の映像を解析するAIカメラと、総菜や牛乳などの値段を決める「カカクAI」を導入した。AIカメラは2022年2月期中に約80店に、カカクAIは2021年7月までにほぼ全店の約350店に展開する。AIにより、接客の向上や売り上げ拡大、食品廃棄ロスの低減などに取り組む。

写真 売り切ることができる値引き額を決める「カカクAI」を導入した食品売り場
写真 売り切ることができる値引き額を決める「カカクAI」を導入した食品売り場
AIが値引き額を決定
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AIが来店客の行動を解析

 AIカメラは富士通のAI映像解析サービス「Fujitsu Technical Computing Solution GREENAGES Citywide Surveillance」を使って開発した。売り場のカメラ映像を基に、AIが来店客の行動を解析する。例えば来店客が一定時間にわたって特定の売り場を見ていたら、インカムで店員に接客を指示する。ある店舗のベビーカー売り場で試験運用したところ、売り場を訪れた客の購入率がAIカメラの導入前に比べ2.3~2.5倍に伸びたという。

 AIカメラは売り場レイアウトや品ぞろえにも活用する。来店客の動線や手を伸ばした商品などの行動データを解析し、店員の端末にヒートマップとして表示。店員はこのデータに基づいてレイアウトや棚割りを改善する。

 「イオンスタイル有明ガーデン」(東京・江東)で先行してヒートマップを使ったところ、「ワイン売り場で他の商品カテゴリーとは異なる消費者の動きが見られた」(イオンリテールの山本実執行役員システム企画本部長)。ワインをじっくり比較するため、「ゴールデンライン」と呼ばれる目線の高さに並べた商品に必ずしも関心が集まるわけではなかったという。

 山本執行役員は「これまでは小売りとメーカーがそれぞれの思い入れでレイアウトを作っていた。データの活用で、客層や商品カテゴリーごとに、より早く改善できる」と意義を語る。

 カカクAIは総菜や牛乳など日持ちしない商品の値決めに使う。同AIは日本IBMと開発。過去3年分の単品ごとの売価や販売時間帯といった販売実績、天候や客数などの環境条件を学習させた。店員が商品バーコードと売り場の在庫数を端末に入力すると、閉店までに売り切れる適切な売価を導き出し割引シールを発行する仕組みだ。

 先行導入したある店舗の総菜部門では、値引き額を2割圧縮できたという。山本執行役員は「データの蓄積が進めば、廃棄ロスを半分以下にできる効果も見込んでいる」と話す。

 リアル店舗のデータは国内外のEC(電子商取引)大手も高い関心を寄せる。楽天グループは西友と共同でネットスーパーを運営しており、西友に2割出資した。米国では米アマゾン・ドット・コムがリアル店舗を出店している。イオンリテールのスマートストア戦略は単なる効率化や経費削減にとどまらず、リアルとネットの垣根を越えた小売りの競争激化に備えた布石としての意味合いも大きい。