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常石造船は2021年6月、設計業務で使うワークフローシステムを稼働させた。設計部門自らがノーコード開発ツールでワークフローを完成させた。メールベースから脱却し、年間1万3000時間分の作業時間削減を見込む。

 「素早くPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回せるようになった」――。広島県などを拠点に船舶の建造と修繕事業を手掛ける常石造船(広島県福山市)の小林裕設計本部機電設計部部長は、設計業務で使うワークフローシステムを内製した利点を語る。

 設計本部は以前から3次元CAD(コンピューターによる設計)を導入するなど、設計業務のデジタル化に取り組んできた。ただ、工場の作業現場に渡す製作図などを設計本部内で確認・承認する業務フローはほぼ紙で進めていた。加えて同本部内の8グループで確認・承認フローはばらばらだった。

図 設計本部内で設計図面の仕様を検討するワークフロー
図 設計本部内で設計図面の仕様を検討するワークフロー
紙ベースのやり取りをデジタル化(出所:常石造船の資料を基に日経コンピュータ作成)
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 2020年1月、デジタル化をさらに進めるため3カ年計画を立案。その矢先に新型コロナ禍に見舞われ、設計本部は業務フローの電子化に前倒しで取り組むこととした。同年春から紙の図面や帳票はPDFやExcelに、それらの確認・承認をメールやファイルサーバー、電子印鑑などに順次置き換えた。

 ところが、この急ぎ進めた電子化が混乱を招いた。グループで業務フローがばらばらのままだったので確認や承認などが円滑に進まず、「メールの見落としや誤操作によるデータ紛失など、業務に悪影響を及ぼす問題が立て続けに発生した」(小林部長)。

 事態を収拾すべく設計本部は2020年12月、設計業務のプロセス全体をデジタルで標準化する検討に着手。「業務に精通する従業員ならではのひらめきや発想をデジタル化することが最も業務を効率化できる」と考え、ワークフローシステムの自社開発を決めた。

 様々な製品を調べた結果、コードを全く書かずにアプリケーションを開発する「ノーコード開発」に着目し、ノーコードの開発環境と実行基盤をクラウドサービスで提供するドリーム・アーツの「SmartDB」を選んだ。同社がサンプルアプリや開発トレーニングなどを提供している点も重視した。

事務担当社員がアプリを開発

 設計本部で事務作業を担当する社員など5~8人が製品のトレーニングを受け、サンプルアプリを参考にするなどして開発を進めた。ワークフローの仕様は使い勝手の面などを考慮し、グループごとに選出した担当者が話し合って決めた。本稼働前の運用テストで現場から出た意見を吸い上げ、すぐに新ステムに反映したことで、現場ではスムーズに使えているという。

 本稼働後もシステム改善を継続しており現場が率先して改善に取り組むようにもなった。今後は基幹システムとの連携も視野に入れる。小林部長は「DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けてPDCAサイクルを加速させていく」と意気込む。