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NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが企業向けIoTの仲間作りを急いでいる。世界の通信大手に業界トップ企業、ベンチャーと組む相手は様々。4年後に11兆円を超える成長市場を巡り、IT大手も巻き込んだ競争が始まった。

 3社が新たに始めるのは既存のIoT(インターネット・オブ・シングズ)サービスに人工知能(AI)を活用した分析技術や多数のセンサー機器の管理技術などを組み合わせたもの。世界各地の通信事業者のネットワークを介して設定情報をネット経由で書き換えられる「eSIM」の普及や、消費電力が少なく安価なIoT向け通信LPWA(ローパワー・ワイドエリア)の商用化を追い風に拡販を狙う。

図 携帯大手3社のIoTサービスと特徴
業界のトップ企業を狙う
図 携帯大手3社のIoTサービスと特徴
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 企業向けIoT市場は富士通やNEC、NTTデータといったIT大手が先行する。そこで後発となる携帯3社は世界の通信事業者やIoT専業ベンダーなどと組むことでIT大手に挑む。

 ドコモは7月2日からIoTの新サービス「Globiot(グロビオ)」を始めた。通信回線からIoTシステムの設計、運用保守まで一括して提供する。同社の法人向けIoTサービスの回線契約数は900万件弱で、そのほとんどが国内だ。吉沢和弘社長はGlobiotの提供開始を機に「グローバル展開する日本企業へ拡販したい」と意気込む。

 Globiotの名称で提供を始める前に農業・建設機械を手掛けるヤンマーに同様のサービスを提供してきた。ブラジルを中心に、建機と農機の稼働監視や盗難防止などに役立てる。今後も「各業界の1位、2位の大手企業を中心に開拓する」(ドコモの藤原祥隆グローバル推進担当課長)。

 IT大手に比べて「海外の通信事業者とも連携しやすい」(同)点もアピールする。既に「IoT World Alliance」の名称で海外の通信事業者9社と協業済み。各国の規制調査や認証取得など顧客企業が必要な準備作業を、現地の通信事業者と連携して支援する。

ソフトバンクはベンチャーと協業

 ソフトバンクはビルや工場の設備管理、物流における荷物の追跡、スマートシティなどの用途を狙う。主な通信技術はIoT機器向けのLPWA規格「NBIoT」だ。同社は2018年4月に国内で初めて商用化している。

 ソフトバンクが手を組むのはIoT専業ベンチャーのウフルだ。クラウド上のデータ蓄積・分析や業務システムとの連携などの技術を持つ。両社は6月28日に資本・業務提携を発表。ソフトバンクのIoTサービスに、多数のアプリやデバイスの管理に強みを持つウフルの技術を組み合わせる。

 KDDIは2019年度中に「IoT世界基盤」の名称で米国や中国、欧州など世界50カ国でサービスを始める。トヨタ自動車と共同でeSIMを使った回線切り替えやデータ収集の基礎技術を開発してきた。データ分析については500件のIoTシステム導入実績を持つ日立製作所と手を組んだ。

 IDC Japanによれば国内の法人向けIoT市場は2022年に11兆2000億円と17年の2倍に増える。IT企業に携帯大手も交え、IoT市場の競争が激しさを増しそうだ。