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 政府が情報処理促進法を改正して「2025年の崖」対策を加速する。目玉はDXを進める際の指針、デジタルガバナンス・コードの策定だ。DXの取り組み具合を格付けする制度も始める。

 政府は2020年春に、「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律案」の施行を目指す。デジタルガバナンス・コードやデジタルトランスフォーメーション(DX)の認定制度「DX格付(仮称)」の新設が主な内容で、12月9日まで開く臨時国会で可決する見込み。政府が企業のDXに特化した指針を設けるのは世界的にも珍しい。

 「日本企業はDXに取り組む十分な準備ができておらず、まだレガシーシステムが残ってしまっている状態だ。こうした状況を打破し、企業のデジタル経営化を推進していく仕組みや体制を国としてつくる。それが今回の法改正の大きな柱だ」。経済産業省の守谷学商務情報政策局情報技術利用促進課課長補佐はこう説明する。

 デジタルガバナンス・コードは「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」のデジタル版との位置付けで経営者がDXに関与する際の指針を国が示す。

 デジタルガバナンス・コードを企業に浸透させるために経産省が始める取り組みがDX格付だ。2020年度中に開始し、先進的なデジタル経営に取り組む企業を認定する。政府内に有識者の第三者委員会を設け、企業の取り組み状況を格付けする。

 格付け方法などは今後詰めるが、企業による自己申告に加え、提出されたエビデンスを第三者委員会が評価する形を想定する。

政府の認定で投資家にアピール

 政府は企業のDXの取り組み状況を格付けで可視化して、投資家などの判断材料にしてもらう狙いだ。経産省は東京証券取引所と共同で「攻めのIT経営銘柄」を選定しており、DX格付はこの制度と整合性を取りながら浸透させていく。国としてDXに積極的な企業を認定することで、「(認定を受けた企業が)ステークホルダーから評価されたり、国内外からの投資や優秀な人材が集まりやすくなったりする」(守谷課長補佐)効果を狙う。

 情報処理促進法改正案には、社会全体でデータを横断的に使える共通基盤(アーキテクチャー)の設計に国が取り組む方針も盛り込んだ。情報処理推進機構(IPA)内に大学教授やDXの専門家など数十人規模で構成する新たな専門組織「産業アーキテクチャ・デザインセンター(仮称)」を設置。データ活用に必要な共通アーキテクチャーをIPAが設計し、企業が利用できるようにする。アーキテクチャーを設計できる専門家の育成も始める。政府調達におけるクラウドサービスの安全性を評価する役割もIPAに追加した。

表 情報処理促進法改正案の主な内容
政府によるクラウドサービスの安全性評価も一元化
表 情報処理促進法改正案の主な内容
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 国がDX推進に注力する背景には、「2025年の崖」問題への危機感がある。経産省は2018年9月に公表した「DXレポート」で、レガシーシステムを使い続ければ2025年以降に最大で年間12兆円の経済損失が発生する恐れがあると指摘した。日本企業のIT関連予算の8割は現行システムの維持・運営に割り当てられており、欧米に比べて攻めのIT投資が不十分とされる。政府はデジタルガバナンス・コードなどを通じ、システムの維持・管理に費やすコストがIT関連予算に占める割合を6割に下げる目標を掲げる。