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「ネットの高校」N高等学校(N高)がVR(仮想現実)授業を始める。2021年4月からバーチャル空間でN高の授業が受けられる。教育にICTを活用してきた同校が新たなオンライン授業の在り方に挑む。

 「VR授業を始めるにあたり手本はなかった。すべてゼロから構築した」。ドワンゴの社長でN高等学校(N高)を運営する角川ドワンゴ学園の夏野剛理事はこう強調する。

 角川ドワンゴ学園は2020年10月、N高および新設するS高等学校で2021年4月からVR授業を始めると発表した。VR授業に利用するのは米フェイスブックのVRデバイス「Oculus Quest 2(オキュラスクエスト2)」。これまでN高が提供してきた授業をバーチャル空間で受けられるコース「普通科プレミアム」を両校で開講する。開講時点で利用可能な6600の教材のうち、約35%に当たる2400を超える教材がVRでの授業に対応するとした。

 VR授業では、同じ授業を受けている他の生徒のアバターが「同席」する。アバターは過去に同じ授業に出席した生徒の挙動をVRデバイスが搭載するセンサーなどで記録し、それをバーチャル空間に再現したものだ。リアルタイムで生徒同士がやりとりできるわけではないものの、他の生徒が授業中どのような様子だったかといったことが分かり、「授業らしさ」を体感できるという。「バーチャル空間では周りに同じ授業を受ける生徒のアバターがいるほか、例えば星の授業では木星のオブジェクトに触れながら授業を受けられる。生徒が実際に教室や授業内容に関連する場所でリアルに授業を受けているような感覚で学習できるよう設計している」(夏野理事)。

写真 N高等学校およびS高等学校が2021年4月から始めるVR授業のイメージ
写真 N高等学校およびS高等学校が2021年4月から始めるVR授業のイメージ
友人のアバターとともに授業を受けられる(画像出所:角川ドワンゴ学園)
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生徒に優しい運用方法を手探り

 一方、授業中にVRデバイスを装着したままでは生徒はノートをとれないうえ、身体的にもリアルより疲れる傾向にあるといった問題もあった。

 N高の学習プラットフォームである「N予備校」を運営するドワンゴのエンジニアとバーチャル空間の構築を手掛けるバーチャルキャストが共同で試行錯誤を重ねた。「生徒にとって一番優しいと思う方法」(夏野理事)を検討し、パソコンによるこれまでのオンライン授業とVR授業をシームレスに受けられる仕組みを構築。パソコンの画面に表示されたボタンを押してVRデバイスを装着するとVRの世界に切り替わり、VRデバイスを外すとパソコンの画面に授業の続きが表示されるといった工夫を凝らした。

 2020年春、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、多くの学校がオンライン授業を模索したが、ICT環境の不備などからスムーズに移行できず、学びの継続性を問われた学校もあった。そもそもオンラインが「常態」で、ICTを学びの道具として積極的に取り入れてきたN高の新たな取り組みに要注目だ。